【季節のテーブル】湯上りの風花
【大紀元日本2月2日】2月は冬たけなわの玄(黒い)冬の臨終の季節です。こんなにも寒い朝を迎えると、なお一層水ぬるむ青い春が待ち遠しくなるのです。朱色の夏の思い出が、白秋の紅葉に色づいて、冬の玄気に抱かれて蘇生する春を今か今かと待っているのですから、やはり何といっても冬の2月は、寒さ厳しくとも胸がどうしても高鳴るのです。
露天のお風呂に浸かりながら、囲炉裏の焚き火に吸い込まれてゆく風花の、落下狼藉のごとくまばゆく燦々と降り急いでゆく姿を眺めていますと、焚き火の火の粉と溶けあい天下る雪の水が一つとなる≪火・水≫(神)ごとの「刹那」があらわれいずるのを目撃しているかのようです。そしてチックタックボーンと梵鐘が鳴り響く刹那の音が、どこからともなくborn、bornと生まれて散り急ぐ風花のあわれに冬の季節ひとしおの感を深くするのです。今しも湯上りのぬくもりに風花がまとい降りてきて、冷やりとした冷たさが身に凍(し)みると、冬の音連(づ)れに今年も巡り会えた幸せを感じるのです。
さて1989年2月9日は手塚治虫さんが亡くなった日です。昆虫少年の情熱が名作「火の鳥」を生み、「アドルフに告ぐ」を世に送りました。オサムシ(治虫)が遺したこの2冊のMangaを雪明りの2月の枕にして、湯上りの刹那の冬の一夜を過ごしてみてはいかがでしょう。
(イザヤ・パンダさん)
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