ドル/人民元7・75元台突破、金融・労働市場への影響を懸念
【大紀元日本2月16日】2月7日中国人民銀行が発表した人民元の対ドル基準値は7・7496元で、6日発表された1ドル=7・7595元からマイナス99ポイントの元高・ドル安となった。これは年初以来、人民元の対ドル基準値が初めて7・75元台を突破し、歴史的最高値を更新した。専門家は人民元の上昇は加速していると示した。中国国際貿易経済協力研究院の研究報告書によると、2007年末までに、対ドルの人民元上昇幅は約9-10%となる可能性があるという。
専門家、金融危機の発生を懸念する
『中国経済週刊』の報道によると、北京大学の中国経済研究センターの林毅夫主任は、急激な人民元高は中国に金融危機をもたらしかねないとし、このため経済全体に打撃を与え、国民は大きな犠牲を払わなければいけないだろうと示した。
林主任は、「人民元切り上げを狙った投資以外に、海外投資家たちは中国に新たな投資資金を投入し、再び住宅市場などの金融市場に参入しようとしています」と述べ、「中国では生産能力過剰の問題がかなり深刻化しています。もし、人民元が大幅に切上げられると、輸入が増加し、輸出が減少するので、生産能力過剰の状況がさらに拡大します。 そのために、企業の収益が大幅に減少するだけではなく、銀行の不良債権が急増するので、経済金融の危機を招く可能性があります」との懸念を示した。
雇用情勢がさらに悪化
中国人民銀行(中央銀行)通貨政策委員会の樊綱委員は、人民元の切り上げがもたらすのは、貿易黒字の減少や輸出商品の競争力の低下ではなく、農民や労働者に直接の損失を与えることであると主張する。
中国青年報の報道によると、樊委員は、人民元の切り上げは中国民間企業の輸出コストが上昇することを意味するため、中国企業の国際市場における商品の販売量が減少し、企業としては減産あるいは倒産に直面せざるを得ないので、結局農民あるいはその他の労働者は職を失って収入が得られなくなると示した、という。
人民元切り上げは長期的なプロセスである
林毅夫氏は人民元切り上げに反対する、中国国内の学者の一人である。最近、中国国内の各ネット上の報道機関では、外貨準備高が多すぎて、経済金融危機が潜在していると指摘する国内専門家の文章が発表されている。一部の文章では、人民元高は海外からさらに多くの投機的なホットマネーの流入を招いたと指摘した。
しかし、上海証券報によれば、中国人民銀行通貨政策委員会の樊綱委員は1月24日に人民元の切り上げは小幅なペースで徐々に行っていくと述べたという。中国国際貿易経済協力研究院が発表した研究報告書でも、人民元切り上げは緩やかで長期的な過程であり、これによって中国対外貿易の発展に新たな挑戦をもたらされるが、同時に更なる発展をはかるために新しいチャンスももたらされるだろうと示された。
急激に進んでいる人民元高に関して、欧米諸国は評価しているようだ。2月10日ドイツ・エッセンで開催された先進7カ国財務省・中央銀行総裁会議(G7)では、従来の人民元切り上げについての議題に触れなかったが、その代わりに最近目立っている円安について議論が交わされた。しかし、欧米諸国は年々増加する対中貿易赤字などを解決するため、引き続き中国政府に対して人民元切り上げの圧力をかけていくとみられる。