停戦協定破棄、スリランカ内戦深刻化の様相

【大紀元日本1月4日】スリランカ政府は2日、反政府武装組織「タミル・イラーム解放のトラ(LTTE)」と2002年2月に結んだ無期限停戦協定破棄した。ロイター通信は、これにより25年にわたる内戦は、最悪の流血衝突に発展する可能性があるという専門家の見解を伝えた。

マヒンダ・ラジャパクセ大統領が2005年終わりに政権を取るとすぐに、4年の停戦平和を打ち破った。大統領とLTTEは両者とも、悪役になるまいと、ノルウェーが調停した停戦協定を破棄しようとはしなかった。

その停戦協定もいまや正式に終結を迎え、壊れた平和会談の復活の希望もなくなり、260億ドルの経済投資も損害をこうむるであろう。スリランカ株式市場は3日、投資家たちが状況の深刻化に身構える中、1・2パーセント下落した。

首都コロン本のジェーンズ・ディフェンス・ウイークリーのアナリスト、イクバル・アサス氏は「これは全面戦争だ。政府は平和という選択肢を捨て、反政府勢力に向けて全面攻撃を選んだ」と指摘する。

2日の停戦協定破棄の発表は、LTTEが仕組んだと思われるコロンボ中心部で起きた軍用バス爆破事件の数時間後だった。爆破で4人が死亡、24人が負傷した。一連の攻撃で数ヶ月間で数百人がなくなった。

3日も戦闘は続いた。軍によると、マナルの北西部地区にあった反政府組織の塹壕6カ所を破壊し、6人のLTTEメンバーが死亡した。一方、LTTEを擁護するネットサイトは、反乱軍は政府軍の攻撃を阻止し、政府軍兵士10人が死亡したとしている。

それとは別に、ポロナルワの北部地区では地雷の爆発で二人の兵士が亡くなった。

2006年はじめ以降、5千人以上が内戦で死亡しており、1983年に内戦が勃発して以降、死者は約7万人に上る。

政府の発表では、LTTE側が再武装し、何度も停戦協定を破ったことから、破棄を決めたとしているが、将来、条件が整い、LTTEが武装解除すれば、話し合いの余地は残されているとしている。

米国務省スポークスマンのシーン・マコーミック氏がワシントンで語ったところによると、米国はその決定に懸念を抱いており、「スリランカ内戦の永続的な平和解決への道はさらに厳しくなった」という。「米国は、敵意を煽らず、これ以上市民の犠牲をださないようスリランカ政府とLTTEの双方に呼びかける」と文書で発表した。

ニューヨークでは、国連事務総長の潘基文氏(前韓国外交通商相)がスリランカ政府の決定に遺憾の意を表し、国連のスポークスマンによると、潘氏は、スリランカの情勢を「本当に心配している」とし、暴力的な状況を助長するとしている。

潘氏は、「スリランカ市民の保護と、影響を受ける地域への人道支援ができるよう、関係方面に働きかけている」と話している。また、国連スポークスマンによると、潘氏は政治的な手段により、スリランカの流血を早急に終わらせる必要があると強調した」という。

LTTEは、スリランカ北部と東部の独立を求めて戦っているが、公式には政府の手続きを告知されておらず、判断を保留にしている。「われわれは公式の情報はまったくないのだ」とLTTEの平和事務局長プリーデバン氏は、LTTE北部の本拠地キリノクチから電話で語った。

「我々はまだコメントはしたくない。実際、ノルウェー大使の対応を待っているのだ」と同氏は話す。

LTTEは、一連の攻撃や暗殺事件から、米国や英国、欧州連合を含む多くの国々からテロリストグループとして不法な活動としてみなされている。「これは実際スリランカを10年前に引き戻すようなものだ」とコロンボの上級外交官は話す。「見通しとしては非常に悲観的だ」。

その外交官は、軍が主な攻撃し始めると、LTTEも一連の攻撃を仕掛け、首都にたどり着いた時期について言及した。それによると、「今後数年間は流血を見るだろうと予測した。

ノルウェーは、停戦協定を監視する使命は「ほとんど」後退してしまい、人権侵害への最後の枷が取り除かれようとしているとし、人権侵害が拡大すれば、国際社会から、スリランカ政府とLTTEの双方が孤立してしまうとみている。

東部での戦闘に勝利した勢いで、ラジャパクセ大統領は反政府軍打倒を誓った。停戦協定破棄により議会の強硬派をなだめることができ、大統領の議会運営がやりやすくなる。

しかし、この内戦には明確な勝利者はなく、戦闘が長年続くという見方も多い。

「政府軍がなんらかの利を得るのは間違いないが、そのことで、別の現実が見えなくなっては困る…コロンボなどで爆発を目にするのは間違いないからだ」とアナリストのアサス氏はみている。

(編集・月川)
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