【ショートストーリー】馬鹿

【大紀元日本2月4日】昔々、ある所に強権を発動する王がいた。

王は、国内を治めるため、また自らの権力基盤を安定させようとして、白を黒といいくるめる自らの宣揚にくみしない民を治世の敵とみなしていた。

王は、そんな反骨精神のある民を大衆の面前に連れ出しては、これを一般公開で検証しようと、鹿を指してこう問い掛けるのであった。「おい!そこに繋がれている動物は、馬に相違ないな!」。

王の絶対的な権力から来る圧力は、想像を絶するものであったが、それでも骨のある、信念のある民は、「…お言葉ですが、それは馬ではありません…鹿です」と言い放った。

すると王は、こういった民を公衆の面前で、生き埋めにしたり、火焙りにしたり、首を吊ったり、斬首にして公開処刑するのが常であった。

そんなある日、王は腹中に痛みを覚えた。終日気分が悪く、食したものを全てもどしてしまうので、国内の名医を招へいしようとの声が挙がった。

果たして、当時「国手」と謳われた名医が、国境近くで見つかり、宮廷に招かれてさっそく王を診ることになった。国手は、王の腹を触診するとその診立てを述べた。「…腹中に腫瘍がございます…」。

王は慌てず騒がず「…では、どうすれば治るのじゃ…」と問うた。「ある薬草を煎じ、それを飲んでいただくと、失神したように前後不覚の状態になります…それからその腹中を切り開き、腫瘍を切り除いた後、腹を糸にて縫い合わせるのでございます。数週間で気分は良くなりましょう…」。

王は、それを聞くと頭に血が昇り逆上した。「おう!国手とやら!その腹のものは、腫瘍ではなく、珠だろう…王の権威を示す玉璽(ぎょくじ)のようなものを天が授けたのに相違ない!そうであろうが!?」と宮廷中に響くような雷を落とした。

国手は、普段からの悪評は聞いて知っていたので、これ以上の抗弁は無駄であり無理と悟り、「…はい、私の診立てが間違っておりました…それは、腫瘍ではなく、王様の仰せの通り、王を象徴する珠でございました」というなり、寂しげに宮廷を一人後にした。

それから他日、宮廷医の薬餌療法もむなしく、王はほどなくして急逝した。

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