チベットの光 (79) 神秘現象

【大紀元日本12月20日】知らぬ間に、虹の間から巨大な蓮華の花が出現していた。さらに蓮華の花の上には七色極彩色の透明な壇城が出現し、強烈な光を発する壇城のてっぺんには、金色に輝く色とりどりの彩雲があった。これらの彩雲は千変万化し、さまざまな殊勝な形象を現した。

 「雪だ!」ある人が叫んだ。「なんと香しい雪なのか!」

 ひとひらの雪は、まるで七色の花びらのように、ひらひらと彩雲から舞い落ち、それは大地に一杯となった。子供たちははしゃいで飛び回り、両手でそれを受け止め、頭といわず顔や全身に花びらをくっつけた。子供たちは無邪気に笑い、大人たちはあまりのことに驚愕し、大部分の人たちは呆けて空を見上げていた。このとき、人々の心の中は澄みきって、一点の雑念もなかった。

 金色の彩雲は宝塔の形状となって、チューバ地方の中心を取り囲み、美しい天音が空中から響いてきて、人々の心霊を浄化した。

 このとき、空中に驚愕すべき現象が顕れた。無数の天人、神々、天将、天兵が、まるで空中から長江のように湧き出てきて、その各個が手に天上の供養品を手にし、瞬く間に空は神々で一杯となった。ある人たちは肩を寄せ合ったり、話し合ったり、手招きしたりする神もいて、神秘的な現象だった。

 人々はまだ眠い目を擦って互いに囁いた。「はたしてこれは、まだ夢の中なのか」

 しかし、それは夢ではなかった。天神はチューバ地方の中心にむかって礼拝し、供養し続け、やってくる神々はますます多くなった。

 ミラレパ尊者が涅槃に入った後、尊者の高弟たちとチューバ地方の施主たちは、連続六日間祈祷し続け、一時尊者の顔がつやつやと光り輝き始め、それは若返ってまるで八歳の児童のごとくになった。

 「どうもラティンバは、すぐには戻ってこれないようだ。われわれで取り急ぎ火葬をしようじゃないか」

 弟子たちは六日間一心に祈祷した後に、こうした議論になった。「もしわれわれが手をこまねいていたら、何にもならないし、供養の遺骨もいただけない」

 皆でそう議論した後、一人一人尊者に対して最後のあいさつをし、洞窟の前に法座をしつらえ、火葬するための台座とした。そして尊者の聖体をこれに安置し、その四周を人間にとって最高の供養品で埋め尽くした後、かれらは種々の儀式を執り行い、点火の儀式を開始した。しかし、どうやっても火がつかなかった。

 このとき、天空に美しい虹が顕れ、五体の空行母がそこから舞い降りてきて、尊者の聖体の傍らに立った。それは、まるで尊者の聖体を護っているかのようであった。

 「尊者が涅槃に入られる前、ラティンバが戻る前にその遺体を動かさないようにとの指示だった。現在、数体の空行母が示している通り、まずは火葬を見送るべきではないのか」。弟子のヤンゾンラバは心配しながら、他の高弟たちに聞いた。「ラティンバはいまだに戻ってきていない。このまま放置すると尊者の遺体は腐ってしまうかもしれない。いったいどうすればいいのか?」

 「尊者と空行母の指示と、火がつかないことから見ると、ラティンバはすぐ戻ってくるに違いない。我々は引き続き祈祷を行おう」弟子のジカンロバが言った。

 そこで、みんなは再び尊者の遺体を洞窟の中へ戻し、祈祷を続けた。

 

(翻訳編集・武蔵)

 

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