中国本土 2億人の一人っ子がもたらす社会リスク
現在、中国本土には2億1800万人の一人っ子がいる。子にのしかかる親の介護問題。もし子に先立たれた場合、両親は喪失感で抑うつになる。1979年以前の多子家庭に比べ、一人っ子家庭は多くの社会的リスクを生んだ。
2002年、北京大学人口学専門家の穆光宗氏は、寧夏回族自治区、甘肅、浙江、湖南、四川の5つの省で一人っ子家庭を調査。その結果、一人っ子は、家庭と経済の2面に不安定さをもたらすリスクが高いと指摘。
家庭リスクとして、「死亡するリスク」「病気障害のリスク」「老人扶養リスク」だ。一人っ子が不慮の事故で、障害者となったり、死亡したりすることを多くの親が懸念している。また、老いた親の世話や医療・介護など高齢化問題が深刻化する。
経済リスクとして、「労働力不足」が挙げられる。2012年から中国の労働力人口は毎年、数百万人も減っていて、さらに労働者の高齢化も経済発展に影響を与えている。また、一人っ子が病気になると、両親を養う事が出来なくなるだけでなく、逆に両親への精神的、経済的負担がかかる。
現在、子供が仕事や独立などで不在となり、高齢の両親だけが残される「空巣家庭」が急速に増加している。一人っ子が生産できる資金は限られており、一人っ子同士が結婚してつくる、祖父母それぞれ2人ずつ、母父、子からなる4・2・1の逆ピラミッド型の家庭構成で、子世代には多大な介護負担がのしかかる。
広州日報は7日、当局の老齢者数統計データを引用し、全国の大・中規模都市部の、高齢者のみの世帯「空巣家庭」は70%に達すると伝えた。また、6日には広東省広州市で開催された文化フォーラムで、中国で進む高齢家庭、生活能力を失った家庭、高齢者のみの家庭、少子化が顕著だと、専門家により明かされた。
中国人口学専門家の易富賢氏は、2013年の国勢調査のデータをもとに推計すると、現在2億1800万人いる一人っ子のうち、1009万人が25歳になる前に死亡する。2030年には毎年の一人っ子死亡者数は27万7000人に達すると推測。そのため、一人っ子に先立たれた「失独家庭」は1000万世帯になると分析する。
「失独家庭」の一番の問題は介護であり、多くの失独者は抑うつ状態となり、老人ホームへの入居を拒否。他人の家族団らんを見るのが一番辛いと話す。
2014年11月、重慶市では数百名の失独者が3日連続、市当局ビルの前で、「失独問題」への対応を求める集会を行った。参加者は、高齢者の保障を訴えた。今年も、各地で政府当局に対するデモが起きている。
(翻訳編集・山本アキ)