NYタイムズを買収しようとした中国人大富豪 陳光標の正体
中国国内メディア「財新網」が9月20日、米紙「ニューヨークタイムズ」買収騒動を起こした富豪・陳光標氏が商業活動と慈善活動において、粉飾や寄付金のだまし取りなどの不法行為を行っていたことを暴露した。また同記事は、すでに失脚した元公安部副部長の李東生氏と元統一戦線工作部(統戦部)長の令計画氏が、陳氏の後ろ盾であると指摘しており、陳氏をめぐる党内政治勢力闘争の様相を改めて浮き彫りにしている。
この評論記事は、中国政府も公認の権威あるメディアが発表したもの。これまで、元中央政治局常務委員の周永康氏や令計画氏らが失脚する前に、本人とその家族の腐敗・汚職に関する評論記事が「財新網」で暴露されたことがある。この前例にならえば、陳光標氏の「失脚」が遠くない。
大紀元の時事評論員・夏小強氏は、同評論記事が解き明かしていない陳氏をめぐる謎について指摘する。
謎その1 高級なビジネス諜報員? 陳光標の本当の職業
共産党や軍内関係者の中で、南京軍区出身者の「南京系スパイ幇」と呼ばれる江沢民派がいる。このスパイ幇の代表的人物が、元総参謀部情報部長の楊暉氏だ。陳光標氏は、この楊暉氏と深いつながりがあった。
2010年より前、楊氏が総参謀部情報部長だったごろ、陳氏は中国共産党国防大学で3か月の諜報活動の研修を受けている。陳氏は人民解放軍の「商業諜報員」となり、「商業圏高級レベル諜報員」とも言われている。
軍側からの支持を受けた陳氏は、武器などを転売することで巨額な富を手に入れた。しかし、このことは中国メディアで報道されたことはない。軍諜報機関の働きで、逆に陳氏は「大慈善家」と称賛されてきた。
陳氏をこのように仕立てた楊氏の背景に、江沢民元国家主席がいる。江沢民が80年代に上海市党委員会書記を在任中、人民解放軍南京軍区の司令官らと親密な関係を築いた。江沢民が主席に就任したのち、南京軍区司令官らの高官を、総参謀部長や国防部長に昇進させた。江はその側近らを通じて、総参謀部を牛耳った。
中国共産党の江沢民系諜報機関は、陳氏が党に有利に働くことができるよう、巨額資金を投じて、世に陳氏が「中国の大富豪」であるとのイメージを広めようとしていた。
謎その2 「NYタイムズ買収騒動」と、でっちあげの「天安門焼身自殺」
陳氏は、2013年に失脚した元公安部副部長の李東生とも深い関係があった。李氏は国営中央テレビ放送局の副局長だった時、同局の「焦点訪談」などの番組において、陳氏を「中国首善」(中国で一番の慈善家)と長きにわたりアピールしてきた。
陳氏の後ろ盾は江派閥軍関係者、李東生氏、周永康氏以外に、元統戦部長の令計画氏、党のプロパガンダを管轄する李長春氏、劉雲山氏とその背後にいる江沢民が挙げられる。
江派閥らが陳氏を「中国首善」とアピールする目的は、迫害が続く法輪功にかんする問題が暴露されたり、または党内権力闘争において不測の事態が起きたりした場合、陳氏を利用して、状況を自らの有利な方向に導こうとすることにあった。
このことは13年12月に李東生氏が失脚した際に実を結んだ。李氏の主導で作成された、中央テレビによる「天安門焼身自殺事件」の自作自演が外国メディアにより暴露されたことで、江派閥はあわてた。それは中国共産党指導部内の権力闘争が、江の法輪功迫害問題に及んでいるためであった。陳光標氏は指令を受けて、ニューヨークで江沢民による迫害政策を正当化しようとした。
14年1月7日、米国ニューヨークのホテルで行った記者会見をした陳氏は、米紙NYタイムズの買収意欲を示すいっぽう、国内の騒動である「天安門焼身自殺事件」を掘り起こした。この自殺を試みたという自称・元法輪功学習者2人の女性を登場させた。この2人の女性、陳果氏と郝恵君氏の親子は、ふたたび法輪功批判の論調を持ち出した。
陳氏のNYタイムズ買収計画はたんなるパフォーマンスに過ぎない。真の目的は「天安門焼身自殺事件」を再び持ち出して法輪功に「カルト」のレッテル張りを重ね、習近平政権に迫害を加担させようとすることだった。
当時、多くの海外メディアが陳氏がなぜ米ニューヨークで突然「天安門焼身自殺事件」を持ち出したのかについて疑問視した。その時、中国国内国営メディアですら、異例にも沈黙を貫いていた。しかし1月14日、陳氏が帰国した後、「新浪網」や「財新網」など国営メディアが相次いで陳氏の「偽善」を暴く記事を数多く掲載した。
陳氏の最大の任務は、江派閥が法輪功を迫害するためのプロパガンダ活動やサポート活動を行うことにある。
謎その3 令計画氏失脚 本当の原因
令計画氏の失脚について、令氏とその親族が重大な汚職をしたことと、令氏が周永康氏のクーデターに参与したことが原因だと多く報じられている。しかしもう一つの原因について、多くのメディアは報じていない。それは令氏が、統戦部長の在任中に積極的に法輪功迫害に参与していたということだ。
令氏は、法輪功迫害のための党機関「610」弁公室と海外の中国大使館とともに、世界各国で迫害政策を推し進めた。海外にいる中国共産党の諜報組織を利用して、習近平氏が海外訪問の際、習氏に対して平和的に迫害の停止を訴える法輪功学習者に暴力事件を起こす。このような暴力事件が海外メディアに報じられることで、習氏の顔を丸潰しにしたことになる。これは、「財新網」評論記事で報じられた、陳光標氏と令計画氏の関係から実証することができる。
前述の陳光標氏とともに米国ニューヨークでの記者会見に出席した「元法輪功学習者」の親子は、「天安門焼身自殺事件」後ほぼ中国諜報機関に厳しく監視されて、十数年間国内外メディアの取材を受けたこともなく、人と接触することも許されなかった。中国当局トップからの許可がなければ、陳氏がこの親子または親子の影武者を連れて出国することが考えられない。江派閥の外交機関、諜報機関と統線機関の連携がなければ、実現できないことだ。令計画氏はこの中で大きな役割を果たしていたとみる。
(時事評論員・夏小強、翻訳編集・張哲)