(NICOLAS ASFOURI/AFP/Getty Images)
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悲哀こもごも 笑うに笑えぬ中国ネット小話

毒入り食品を製造してもOK、でも危険だと指摘したら逮捕―。共産党による専制政治体制下の中国では、腐敗や汚職が蔓延し、言論や表現は厳しく統制されている。中国のネットユーザは皮肉を込めた「小話」で、裁判や警察でさえ不正がまかり通る堕落した社会で感じた、やるせなさを吐露している。下記はその一部をまとめ、抄訳した。

【現在の国情について】

現代のトレンド:若いうちから母親になるのは貧乏人の娘、若いうちから父親になるのは金持ちの息子。若いうちから家の切り盛りをするのは都会の子ども、若いうちから家を出るのは田舎の子ども。若いうちから国を出るのは政府高官の子ども、若いうちから愛国者になるのは一般市民の子ども。

【あべこべモード】

私の住むこの国は、あべこべモードに突入している:長期に渡り工賃や給料の支払いを滞らせてもOK、でも工賃や給料の支払いを求めたら逮捕。人の家を強制的に取り壊し、土地を違法に取り上げるのはOK、でも自分の家や土地や財産を守ったら逮捕。汚職はOK、でも高官の資産公開を求めたら逮捕。賄賂を貰って法を無視し、冤罪事件をでっちあげるのはOK、でも被害者の人権を擁護したら逮捕。毒入り食品を製造してもOK、でも毒入り食品を危険だと指摘したら逮捕。…

【ありえない設定】

「人民的名义(訳注:人民の名前、反腐敗をテーマにしたテレビドラマ)」のなかの、どう考えてもありえない人物設定。高官の市委書記・李達康の妹が、不当に扱われていたと訴える陳情者というもの。もっと変なのは、この妹の訴えが長い間放置され、役人の誰もそれを気にもとめていなかったこと。さらにあり得ないのは、この妹が元幼稚園教諭で、その後市委書記である兄の家で家政婦として働いていたという設定。こんなに貧乏くさい市委書記の妹がどこにいる?これじゃあ「反腐敗ドラマ」でなくて「神話ドラマ」だ。

【豚にも及ばない】

9年前に起きた四川大地震で生き埋めになった豚が、地震発生後36日ぶりに救出された。その奇跡の豚、「豚堅強(強い豚の意味)」は今、成都の建川博物館で元気に暮らしている。そこから250キロ離れたところに住んでいる「豚堅強」の元の飼い主は、「ちょっとうらやましい」と漏らしている。この夫婦は70代だが、いまだに生計を立てるため色々雇われの仕事をしなければならず、「豚堅強」に会いに行きたくても貧しくて列車の切符が買えない。「豚堅強は幸運だ。かいがいしく世話をされ、医者にも診てもらえる。私は70歳まで生きてきたが健康診断すらしたことがない。私たちよりいい暮らしをしている豚堅強が、うらやましい」

【国家の主】

「国家の主は君だ、この国は君たちのものだ」と(中国共産党は)言うけど、俺の立っているこのわずかな地面ですら俺の土地じゃない。「国家の主は君だ」と言うけど、子供を作る自由さえ俺にはない。「国家の主は君だ」と言うけど、俺は選挙権すら持っていない。「国家の主は君だ」と言うけど、俺には真実を語る権利すらない。

【中国の法制度の現状】

  1. 三つの基本法:上層部の見方(看法)、上層部の考え方(想法)、上層部の見解(説法)。
  2. 三つの訴訟の原則:重大案件は政治を重視し、中くらいの案件は影響を重視し、小さい案件は法律を重視する。
  3. 三つの効力の原則:憲法は国外の見解に従い、法律は党の内部規定に従い、党の内部規定は上層部の決定に従う。
  4. 法治の現状:厳格な法整備、普遍的な違法行為、選択的な法の適用。

(翻訳編集・島津彰浩)

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