中央紀律検査委員会主任王岐山氏 (Feng Li/Getty Images)

反腐敗立役者の王岐山氏が頻繁に露出、19大の留任が決定か?

習近平政権第二期目がスタートする第19回党大会の開催まであと残り40日。次期最高指導部のメンバー構成をめぐって憶測が飛び交っている。なかでも反腐敗運動の立役者、現政治局常務委員で中央紀律委員会書記(中紀委)の王岐山氏の留任は大きな焦点となっている。6月から、同氏のスキャンダルが海外メディアに報じられ、留任が絶望的との観測が出ている。デマを打ち消すためか、ここ最近、政府メディアは同氏の動きを大きく取り扱っている。

各報道によると、王氏は3~5日まで、湖南省紀律検査委員会や国有大手企業などを視察した。6日に、王氏とその親族ら、最高指導部メンバーの半数が、王氏の義理の父である故・国務院副総理姚依林氏生誕100周年記念イベントに出席した。王氏の夫人は姚依林氏の次女に当たる。また8日に、中国国営中央テレビ(CCTV)は「全国紀律検査機関表彰大会」に出席した王氏の様子を報道。

特に姚依林氏生誕100周年記念イベントに、最高指導部メンバーの李克強、劉雲山、王岐山、張高麗など各氏のほか、中央政治局委員の趙樂際、栗戰書両氏、国務委員兼国務院秘書長の楊晶氏などそうそうたるメンバーが出席した。

7月15日に江沢民派のメンバーで四川省重慶市前トップの孫政才が失脚して以降、王岐山氏はしばらく雲隠れしていた。しかしその間、一部の海外中国語メディアでは、王氏について「暴露記事」を多数掲載し、「重病説」すら出回っていた。また、68歳以上の最高指導部メンバーが勇退するという暗黙のルールがあるため、すでに69歳になった同氏は年齢的にも留任が厳しいとの見方がある。

一連の報道は同氏の潔白を証明し、同氏が次期中央政治局常務委員に留任するというメッセージを送っている、と中国政治評論家の辛子陵氏は分析する。「習近平当局が、国内外に対して王氏の党内での地位が変わっていないことをアピールしているのであろう」と分析した。

「江派は海外で王氏に関して様々なデマを流して、中国一部の国民に19大で王氏が退任するとの印象を与えた」「しかし、王岐山氏は19大後も最高指導部に留まるだろう。なぜなら、王氏の退任は、これまでの反腐敗運動が間違いだということを意味するからだ。だから、19大後も、習近平氏、李克強氏と王岐山氏の3人体制は維持される」

英紙・フィナンシャルタイムズ(8月3日付)は、2012年以降王氏が率いる中央紀律検査委員会は、「トラ級」の汚職高官を150人以上失脚させた。なかには軍制服組トップや国有企業の高級幹部も含まれているため、「党内において、王氏には多くの政敵がいる」との見解を示した。

大紀元コメンテーターの川人氏は、最近海外中国語メディアが王岐山氏や妻の親族の「暴露記事」を掲載したのは、反腐敗運動で利益を損なわれた党内江派権益集団、つまり王岐山氏の政敵らによる報復だと指摘した。

川人氏は「19大で王岐山氏の留任問題は、習陣営と江派との戦いの勝敗を決める最大の要因となっている。王氏が退任となれば、まだ取り締まられていない『トラ級』の江派腐敗高官らは必ず、捲土重来(けんどちょうらい、一度敗れたり失敗したりした者が再び勢いを盛り返して巻き返すこと)を図る。いま優勢になった習陣営が不利な状況に陥ってしまう。したがって、『習近平・王岐山連合』という構図は崩れることはない」との見方を示した。

 (翻訳編集・張哲)

関連記事
日本では、移民は基本的に労働力として扱われ、本来の意味での移民政策が存在しないとも言われている。どういうことなのか?
「孔子学院?新華社?こんなものはもう退屈だろう。中国が本当に世界的なソフトパワー拡大には、モバイルゲームに焦点を当てるべきだ」中国国内メディアは最近、100億米ドル規模に達している中国ゲームの影響力の高まりに自信を見せている。当局は、ゲームコンテンツを通じて中国文化の浸透工作や、親共産主義人物の人気獲得を促進したりしている。
日本料理の「五味五色」が生む健康の秘密。陰陽五行に基づく養生観が、日本人の長寿とバランスの取れた食文化を支えています。
2023年5月25日に掲載した記事を再掲載 若者を中心に検挙者数が急増する「大麻」(マリファナ)。近日、カナダ […]
中国共産党が7月に反スパイ法を改正し、邦人の拘束が相次ぐなか、外務省が発表する渡航危険レベルは「ゼロ」のままだ。外交関係者は邦人の安全をどのように見ているのか。長年中国に携わってきたベテランの元外交官から話を伺った。