中国河北省邯鄲市の大学入試前、職員は顔認証システムを使用し受験生の確認を行っている(STR/AFP/Getty Images)

「顔認証」が中国で急速に普及、国民監視に悪用の恐れ

中国国有銀行大手の中国農業銀行は13日、現金自動預払機(ATM)に顔認証技術を導入し預金の引き出しサービスを始めた。専門家は、顔認証で人物を特定できるうえ、追跡も可能なため、中国当局が国民全体や、陳情者への監視ツールとして悪用する可能性が高いと指摘した。中国国内では近年、「顔認証」技術が急速に普及している。

中国メディアによると、中国農業銀行は全国2万4000の支店と10万台のATMに対して、順次に顔認証システムを設置していくという。昨年末、業界初として招商銀行がすでに一部の支店に導入した。

「顔認証システム」とは赤外線カメラを使った生体認証システムだ。赤外線カメラで目や鼻などの特徴や顔の凹凸を検出する。その特徴を使い、身分証明書の写真などから構成される政府のデータベースに照会し、特徴と一致する画像を検索する。さらに、被写体の人の顔の肌理(キメ)などの特徴も捉えることができるため、より速く人物の特定ができる。

農業銀行は、美容整形や厚化粧で顔が認証できない場合があるとした。

中国では現在、飲食店や「無人コンビニ」、電気量販店での決済、日本の大学入試センター試験に当たる「高考」での替え玉受験防止、公共トイレでトイレットペーパーの無断持ち去りなど、様々な場面で顔認証システムが使われている。

中国メディアによると、当局は今年7月20日「次世代人工知能発展規劃」を制定し、人工知能技術を中心に顔認証技術の導入拡大に力を入れようとしている。

いっぽう、台湾政治大学の劉宏恩・副教授は自身のフェイスブックで、顔認証システムを通じて中国当局が国民への監視を強めようとしていると指摘した。劉氏は市民の顔の特徴に基づき、当局にとって「社会不安の要因」となる人権活動家や陳情者を簡単に割り出し、身柄を拘束すると懸念した。

中国当局は現在、膨大な写真データベースを持っている。中には、企業と個人を含む7億人のネットユーザーがネット上で掲載した写真や映像のほかに、16歳以上の中国国民が持つ顔写真付き身分証明書のデータも入っている。

また当局は、中国各地にある膨大な数の監視カメラを通じて、国民の写真や映像データを入手している。

米紙・ウォールストリート・ジャーナルの7月の報道によると、現在中国公共施設および個人所有の監視カメラの数は1億7600万台に上る。2020年には、監視用のカメラをさらに4億5000万台新規に設置するという。

ある人権活動家が同紙に対して、過去警察当局に連行された際、当局の「コンピュータシステムは、あなたがどこを歩いているのか、どこにいるかをすぐ追跡ができる」と言ったことを証言した。

中国安徽省人民検察院元検察官の沈良慶氏は大紀元に対して、中国当局の監視技術は一般的な治安問題ではなく、政権維持のために国民監視に使われているとした。「ビックデータを使い、顔を識別することは市民のプライバシー侵害に当たる。非常に恐ろしいことだ。将来、国民が当局に陳情しようとすれば、家から出た瞬間、直ちに連行されるかもしれない」と指摘した。

(翻訳編集・張哲)

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