アングル:サウジ、汚職摘発巡る動揺払拭へ企業と対話

[リヤド/ドバイ 20日 ロイター] – サウジアラビアがムハンマド皇太子の主導で大規模な汚職摘発に動いたのは昨年の11月だった。それから3カ月が経過した今、サウジ当局は投資家に安心して事業を続けるよう呼び掛けている。

同国内外の投資家は長年汚職のまん延に不満を漏らしてきただけに、その対策はムハンマド氏が打ち出した包括的な経済改革の重要な要素の1つだった。ただ、王族や財界、官界の大物が次々と拘束された事態に一部の企業首脳は心中穏やかではいられなくなった。なぜなら取り締まりのプロセスが秘密に包まれ、拘束の容疑内容は少なくとも政治的動機に基づいていたからだ。

サウジと幅広く取引している西側のあるビジネスマンは「こうした状況は、サウジに投資すべきだと勧める理由にはとてもならない」と述べた。

サウジ当局は対応を誤ったとなかなか認めたがらない。それでもムハンマド氏を含む政府首脳は1月に国内の企業幹部と会談し、彼らを安心させるために摘発がほぼ終わり安全に事業を行えると説明していたことが、会談出席者から話を聞いた5人の関係者に取材して分かった。

また1月の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)に参加したサウジ政府当局者は、摘発がもたらしたプラス面を強調した一方、同国の意図が幾分違って受け止められた可能性にも言及した。

カサビ商業・投資相はダボス会議で「われわれがあちこちで間違ったことは確かだ。サウジは完璧な国家ではなく、他の国と何ら変わりない。しかし成功への道は常に形成され、全体の流れはそこに向かっている」と語った。

サウジ政府の報道官はコメント要請に返答しなかったが、アル・モジェブ司法長官は汚職摘発について「独立的な司法手続き」として実行され、「透明性と開放性、適切な統治を確立するための改革の一環」だと正当さを力説した。

関係者の話では、1月の政府首脳と企業幹部の会談は首都リヤドやジッダなど各地で開催された。

一番重要なメッセージは、また大規模な摘発に乗り出すことはもはや検討されておらず、新たな取り締まりを心配していたサウジ企業界に安心感を与えることだった。関係者の1人は「反汚職キャンペーンは終わった。通常通りビジネスに従事し、サウジへの投資を続けるよう出席者に伝えられた」と打ち明けた。

もう1つのメッセージは、サウジ当局が汚職の認定を比較的狭い範囲にとどめるというもの。当局としてはサウジの商慣習を改善したいが、急激に慣習を変えて普通のビジネス上のつながりにまで打撃を与えるつもりはないという。

サウジではしばしば、個人的な関係が企業同士の契約に結び付き、現金や不動産を贈ることは契約成立に不可欠とみなされる場合があるだけに、こうした当局の姿勢に多くの企業関係者は胸をなで下ろした。

別の関係者は、企業から第三者への支払いが必要になるケースがあることを政府側が理解していると出席者に伝えたと述べた。

もっとも、依然としていつでも拘束されるのではないかの不安を消せない人々もいる。あるサウジのビジネスマンは「企業界全体がトラウマに見舞われている」と嘆く。

さらに会談出席者と話したあるバンカーによると、釈放された拘束者の何人かは、特定の事業プロジェクトへの資金協力を求めるかもしれないと言われたという。

(Stephen Kalin、Marwa Rashad、Tom Arnold記者)

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