焦点:米朝首脳会談、トランプ氏と金正恩氏は何を話し合うのか

[ワシントン 22日 ロイター] – トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長による初の米朝首脳会談に向けた準備が進んでいるが、開催の日時や場所、米国側の交渉戦略など、いまだ基本的な要素は確定していない。

現職の米大統領が北朝鮮の指導者と会談するのは史上初めて。米朝首脳会談に先駆けて、今月27日には韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が金委員長と会談する。

トランプ大統領は、金委員長との会談は5月下旬か6月に実施されると語る一方で、望ましい結果が得られそうもないと判断したら、会談をキャンセルすることもあり得ると発言している。

金委員長が22日、核実験場を廃棄し、平和と経済発展を追求すると表明し、核実験と弾道ミサイル実験の終結を宣言したことで、米朝首脳会談が実現する可能性が大きく高まっている。

米韓両政府の当局者は、金委員長が非核化を議論する意向を示したとしているが、22日発表された北朝鮮の声明は、既存の核兵器の廃棄には一切触れなかった。

トランプ大統領など各国指導者は、金委員長の核実験終結の発表を歓迎したが、一部で北朝鮮の意図に懐疑的な見方も出ている。

トランプ大統領は22日、米本土を攻撃できる北朝鮮の核ミサイル開発を巡る危機の解決に向けた道のりは長いとの認識を示した。

トランプ氏はツイッターへの投稿で「北朝鮮情勢の解決にはまだ長い道のりがある。うまくいくかもしれないが、いかないかもしれない。時がたてば分かるだろう」と述べた。

トランプ政権は、北朝鮮に「完全かつ検証可能で、不可逆的な非核化」を求めるとしているが、どのような戦略で交渉を進めるのか詳細はほとんど明らかにしていない。

米政権は、過去の失敗は繰り返さないとしている。だが、不首尾に終わった数十年間に及ぶ北朝鮮との交渉の歴史を見れば、今後数年を要するであろうこの交渉がたどる道筋を知ることができる。

<非核化>

 

1990年代初頭以降の北朝鮮との国際交渉は、核ミサイル開発を放棄させることを目標にしてきた。だが北朝鮮は昨年、水素爆弾と大陸間弾道ミサイル(ICBM)とみられる兵器の実験を強行している。

トランプ政権の次期国務長官に指名されたポンペオ中央情報局(CIA)長官は、今月行われた上院委の指名公聴会で、米朝首脳会談によって北朝鮮から外交的結果を引き出す軌道に乗ることを楽観視していると述べた。しかし、この会談で包括的合意に至るとの幻想を抱いている者はいない。

「北朝鮮指導部に対して、米国を核兵器のリスクにさらすことから手を引かせるような合意」を目指していると、ポンペオ氏は同公聴会で述べ、米国の国益を最優先する考えを示した。この公聴会前に同氏は北朝鮮を訪れ、金委員長と会談している。

ポンペオ氏の発言は、トランプ大統領が北朝鮮に対してICBMについての早期合意を優先し、同盟国を脅かす短距離ミサイルの問題は棚上げにするのではないかとの懸念を日本と韓国に植え付けた。専門家は、北朝鮮がICBMを完成させるにはなお数回の発射実験が必要であり、金委員長が表明した実験停止には大きな意味があると指摘する。

昨年9月の核実験と11月のミサイル実験以降、北朝鮮が事実上、実験を凍結していることは、米朝交渉の環境整備に寄与している。

<検証と見かえり>

北朝鮮は、自国経済を締め付けている国際制裁の解除を求めている。失敗に終わった過去の合意では、北朝鮮は兵器開発を放棄する見返りとして、重油や代替の原子炉を含む支援に加え、攻撃や侵略しないとする米国の誓約を含む安全保障を求めていた。

北朝鮮はまた、過去の合意で、核拡散防止条約(NPT)に復帰し、 国際原子力機関(IAEA)の査察官受け入れにも合意していた。北朝鮮の核の主力施設である寧辺(ヨンビョン)の原子炉で行われている核関連活動は、今後の交渉における焦点の1つになるだろう。米政府はまた、豊渓里(プンゲリ)の核実験場の廃棄についても証拠を求めるだろう。

ポンぺオ氏は、北朝鮮は不可逆的な行動を取るまで見返りを期待すべきではないと発言している。北朝鮮が核兵器プログラムの解体に応じるかと聞かれた同氏は、歴史的な検証を踏まえれば「楽観的ではない」と回答。一方で、過去の交渉では、制裁緩和のタイミングが早過ぎたとも指摘した。

トランプ政権は22日、米国が譲歩するには、まず北朝鮮による大幅な核プログラムの解体が必要になるとの認識を示した。

「われわれはまず、北朝鮮の大幅な核プログラムの解体を求めている。非核化が実現するまでは、国際社会による最大限の圧力が続けられる」と、ホワイトハウスの国家安全保障会議の広報官はロイターに述べた。

米情報機関当局者は、国連による昨年の3度の制裁強化が、「北朝鮮の輸出収益を大きく減少させた」とみている。

だが、金委員長が真剣に交渉する意思があるかどうかは、国際的な経済的圧力の継続にかかっており、それには中国とロシアの協力が必須となる。

現段階では、「金委員長に自身の一族が長年取り組んできた核開発を自発的に手放す用意があると考えたり、非核化の発言を額面通り受け止めるのは、極めてバカなことだ」と、ある政府当局者は話す。

<拘束中の米国人>

ホワイトハウスは、米朝首脳会議で北朝鮮に拘束されている米国人3人についても取り上げるとしている。

トランプ氏は、米政府が3人の解放を要請しており、「実現する可能性が相当ある」と述べた。だが、3人の解放が首脳会談実現の条件かどうか聞かれると、回答しなかった。

<平和条約>

北朝鮮は、1953年の朝鮮戦争の停戦協定に代わる平和条約の締結を長年求めている。北朝鮮は韓国との間でこの交渉を再開したが、韓国側は、「平和政権」や、「敵対的行動を終結する合意」などの表現を使って、「平和条約」という言葉を回避している。

トランプ大統領は、北朝鮮が核兵器を放棄するなら、南北の交渉を「応援する」としている。

David Brunnstrom and John Walcott(翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)

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