焦点:朝鮮戦争は「終結」するか、一筋縄ではいかない平和条約
[ソウル 18日 ロイター] – 南北首脳会談を27日に控え、韓国と北朝鮮は1950―53年の朝鮮戦争を正式に終結するための平和条約を協議している。同戦争では休戦協定が結ばれたため、厳密には両国はいまだ戦争状態にある。
トランプ米大統領は、北朝鮮が非核化に合意するのであれば、そうした努力を「祝福」すると語った。
韓国と米国主導の国連軍は、いまだ北朝鮮と戦争状態にある。正式な平和条約という考えは今に始まったことではなく、また、1回の南北首脳会談で解決できることではないと、専門家は指摘する。
当時の韓国指導者たちは、朝鮮半島を分断する休戦に反対し、協定に署名しなかった。休戦協定に正式に署名したのは、北朝鮮軍の司令官、国連軍の米司令官、そして中国人民志願軍の司令官だった。
「南北首脳会談で、両国が1953年の休戦協定の終結を発表することは不可能だ」と韓国外国語大学校のPark Jae-jeok教授は指摘。「だが、南北が戦争を終結させることに合意し、平和条約に向け努力し、関係国との協議を推進することは可能だろう」
<確かな平和状態>
北朝鮮はこれまで、米国とのみ平和条約を交渉するとの立場をとってきた。
北朝鮮の最初の指導者で、建国の父である金日成主席は1970年代、カーター米大統領(当時)に平和条約を提起した。
平和条約を巡っては、南北間で以前にも真剣に協議が行われた。1992年、両国は「現在の休戦状態を確かな平和状態へと移行するために共に努力する」ことで合意した。
最後に南北首脳会談が行われたのは2007年10月。両国は、「現在の休戦体制を終わらせ、永続的な平和体制を築く必要性を認識する」と宣言。また、「直接関与する3者あるいは4者間の首脳会談を朝鮮半島で開き、戦争終結を宣言するために協力する」と宣言した。
韓国統一省の報道官は18日、同国政府が2007年のこの立場を踏襲すると語った。
<新たな合意>
実際に何が休戦協定に取って代わるかは、また別の問題だ。米韓両当局者いずれも新たな合意がどのようなものになるかについて確認していない。
「非核化と平和条約はコインの表と裏だ。したがって、韓国は来週の南北首脳会談でこの両方を提起するだろう」と、アジア政策研究所の上席研究員、Shin Beom-chul氏は言う。「問題は、平和条約が鍵となる安全保障において、北朝鮮は韓国ではなく米国から確約を得たいということだ」
「韓国と北朝鮮は、戦争は終結したという主にシンボリックな宣言を行うが、そうした合意は米国が正式なものとするまで中味のないものになるというシナリオが考えられる」と同氏は語った。
韓国政府の最近の声明を見ると、「平和体制」あるいは「敵対行動を終結させるための合意」に言及し、「平和条約」という言葉が踊っている。
北朝鮮はこれまで韓国からの米軍撤退を求めてきたが、金正恩・朝鮮労働党委員長は、この件について柔軟な姿勢を見せる兆しがあると、韓国外国語大学校のPark教授は指摘する。ただし、中国も韓国の米軍駐留には懸念を示している。
正恩氏は最近の米韓合同軍事演習に反対せず、専門家を驚かせた。父親の金正日総書記もかつて、韓国に対し、純粋に平和維持のために活動するのであれば、北朝鮮は米軍駐留を受け入れる可能性を伝えていた。
一方、北朝鮮は平和条約を、米韓同盟を弱体化させる手段として考えている可能性を警告する専門家もいる。
「これはわなだ」と、 保守系シンクタンク、アメリカン・エンタープライズ政策研究所(AEI)のマイケル・ルービン氏は指摘。「トランプ氏がそれにはまらなければいいのだが」と、最近の分析でこう記している。
米平和研究所(USIP)は2003年の報告書の中で、効果的な条約は、米国、中国、韓国、北朝鮮によって策定される必要があると結論付けている。
同報告書は、敵対関係を終わらせ、米朝関係を正常化し、韓国と北朝鮮の主権を認め、兵器削減と核兵器査察を受け入れ、朝鮮半島の安全を米中が保障することへの合意が条約に含まれるべきだとしている。
対話への中国の関与は「悪化因子」となり得ると、アジア政策研究所のShin上席研究員はみている。
「平和体制の下で、米軍が朝鮮半島に駐留し続けることを中国は問題視するだろう。たとえ米軍のプレゼンス継続を受け入れたとしても、中国は米国に対し、核兵器やミサイル防衛システムのような戦略兵器を配備しないよう求めてくる可能性がある」
韓国も米国も、平和条約は北朝鮮が核兵器の放棄に合意した場合のみ実現可能だとしている。
Josh Smith(翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)