中華文明を理解する10個の数字 知れば中国人からも一目置かれる

数字にはどのような役割があるのでしょうか。実は古代中国において、数字は単なる計算のための存在ではなく、奥深い理論に裏付けられた深い意味がありました。それぞれの数字が持つ意味を知れば中国文化をよりよく理解できるだけではなく、きっと中国人からも一目置かれることでしょう。

零:無極(むきょく)

無極は限りなく大きいもの、無限大を意味します。古代中国の思想家・荘子荀子も無極について言及しました。古代中国哲学の中では、無極はすなわち万物を生み出す源であり、音も色も匂いもなく、始まりもなく終わりもないのです。そのため中国の先哲たちはその何もないさまを指して「無極」と名付けたのでした。何もないさまを指してゼロを生み出した古代インド人と同じ発想です。

一:太極(たいきょく)

中国古代の漢字辞典「説文解字」では、一は天地を分け、万物を造化するとあります。古代の人々は、「一」は単なる最小の数だけではなく、万物の始まりだと考えました。すなわち「一」は万物を構成する要素であり、世界の根源だと考えました。「易経」には「易には太極あり、これより両儀生ずる」とあります。無極から太極が生じ、さらに太極から両儀が生ずるという意味です。中国文化の「一」に対する思い入れは強く、「老子」には「道より一が生じ、一より二が生じ、二より三が生じ、三より万物生ず」とあります。すなわち天地は「道」から生じ、万物は「一」から生じるというのです。

二:陰陽、両儀(いんよう、りょうぎ)

「説文解字」では二は地の数とされ、天の数である一と対比されています。「漢書」でも地の数は二より始まるとされました。すなわち奇数は天の数、偶数は地の数を表します。よく知られている「太極図」の白と黒の部分は「両儀(りょうぎ)」といい、一般的に陰と陽を表していると考えられています。両儀はそれぞれ反対の色の点がありますが、それは互いに内包することで流転することを可能としているのです。

三:三才(さんさい)

三才とは天、地、人を指します。「易経」の論理体系も「三」とその倍数である六の上に成り立っていると言えます。「易経」では、天の道には陰と陽があり、地の道には柔と剛があり、人の道には仁と義があると説いています。また、八卦(はっけ)は八つの卦があり、一つの卦には六つの爻があります。

四:四象

四象とは青龍、白虎、朱雀、玄武を指し、それぞれ東西南北の方角に対応しています。古代中国には星宿(せいしゅく)に対する信仰があり、夜空の星を二十八の星宿に分けていました。しかし二十八の星宿は記憶しづらいため、四つの大きな部分に分け、四つの神獣を当てました。

五:五行

五行とは、金・木・水・火・土を言います。春秋戦国時代までは一般的な概念でしたが、戦国時代末期に記されたとされる書物「尚書・洪範」には「金、木、水、火、土」と定められました。戦国時代末期の鄒衍(すうえん)を代表とする陰陽家は五行を陰陽や日月星宿、乾坤などと合わせることで五行説を唱えました。五行説は天文学や暦、医学など様々な分野で応用され、漢王朝で盛んに用いられました。

六:六合

六合(りくごう)とは上下及び東西南北を指します。また。古代中国では物事を進めるうえで吉か否かを知るための方法としても用いられていました。そのため人々は長い間「六」という数字を最もめでたいものだと考えてきました。中国の「六六大順」という言い方もこのことに由来します。

七:七星

七星とは北斗七星のことです。古代中国では杓の器の部分を作る天枢、天璇、天璣、天権の4つを魁(かい)、柄の部分を作る玉衡、開陽、揺光の3つを杓(ひょう)と呼びました。北斗七星の柄の向きから季節を読み取る方法もありました。

八:八卦

八卦(はっけ)とは易経の八つの概念であり、伏羲(ふくぎ)が描いたとされています。一つの卦は三つの爻(こう)から構成されています。伏羲による先天八卦と周の文王による後天八卦のほか、連山八卦と帰蔵八卦もあります。

九:九宮

九宮とは中国古代の天文学における概念であり、天球を「井」の字形に九つの区域に分割しています。二十八の星宿や洛書など多くのものと対応関係にあります。四つの陽の宮である乾宮(けんきゅう)、坎宮(かんきゅう)、艮宮(ごんきゅう)、震宮(しんきゅう)と、四つの陰の宮である巽宮(そんきゅう)、離宮(りきゅう)、坤宮(こんきゅう)、兌宮(だきゅう)に、中央の中宮(ちゅうぐう)を加えて九つの区域をなしています。漢王朝時代には「九宮占い」や「九宮術」、「九宮算」などの応用がありました。

(編集・文亮)

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