Getty Images

住職と小坊主の深い対話

古くなったぼろぼろのお寺に、一人の小坊主と住職さんがいた。小坊主は気落ちして、「この小さいお寺には私たちの二人しかいません。私は下山して托鉢(たくはつ)するとき、他人に野良坊主などと悪口を言われます。いただいた線香と灯明の銭もスズメの涙です。あなたはこのお寺を大きな寺院にするとおっしゃいますが、もはや不可能でしょう」と嘆いた。

住職は袈裟(けさ)を羽織って、何も言わなかった。ただ目を閉じて静かに聞いているだけだった。小坊主はくどくど言い続けた。しばらくして住職は沈黙を破って言った。「北風が強く吹いている。寒くないのか?」

小坊主は体が震えながら言った。「寒いです。両足がこごえて感覚がなくなりそうです」。すると住職は「じゃあ、早く寝よう」と言った。

住職と小坊主は明かりを消して布団に入った。一時間後、住職は「暖かくなったか?」と聞いた。

小坊主は「もちろん暖かくなりました。太陽の下で寝ているようです」と答えた。

住職は「寝床に置かれたふとんは冷たかったが、人が入ると暖かくなった。考えてみよう。布団が人間を温めたのか、それとも人間が布団を温めたのか?」と聞いた。

小坊主は笑った。「師僧は可笑しいことをおっしゃります。布団がどうして人間を温めることができるでしょうか。もちろん人間が布団を温めたのですよ」

住職は「布団が私たちに温もりを与えず、私たちがかえって布団を温める必要がある。ではなぜ布団を掛けるのか?」と言った。

小坊主はしばらく考えて答えた。「布団はわれわれに温もりを与えてくれないけれど、厚い布団は暖かさを保ってくれるから、布団の中で気持ちよく寝ることができます」

暗闇の中で住職は心得てほほ笑んだ。「われわれ僧侶はまさに厚い布団を被って寝ている人間ではないか。衆生はまさにわれわれの厚い布団ではないか。われわれが一心に善のみを考えれば、冷たい布団はいずれ暖かくなる。衆生という布団はわれわれの温もりを保ってくれる。われわれはこのような布団に寝ていて暖かくないはずがない。鐘の声が絶えない大きな寺院は決して夢ではないのだ」

小坊主はこの話を聞いてひらめいた。翌日から小坊主は毎朝早く山を下りて托鉢し始めた。依然多くの人から悪口を言われたが、小坊主は始終、礼儀正しく振舞った。

十年後、寺は大きくなり、和尚も多くなった。参詣者が絡繹(らくえき・道路に人馬などの往来が絶え間なく続くこと)とし、当時の小坊主は住職になった。

われわれはみんな「布団」の中に生きていて、身の回りの人がわれわれの「布団」である。われわれが懸命に布団を温める時、布団もわれわれに温もりを与えてくれるはずだ。

(編集・文亮)

関連記事
消化を助け、健康にも効果的なクミン。風味を加えるだけでなく、日常的に取り入れることで得られる健康メリットを紹介します。次回の料理にぜひ試してみてください!
産後うつ病は、母親の7人に1人が経験するとされます。症状を見逃さないための兆候や治療法、そして家族で支える方法を紹介します。
日本でも人気の中華料理・刀削面はもともと山西省の一般家庭の主食でした。太くもちもちの面にパンチの効いたつけ汁を絡めて食べるのも最高ですが、料理人の手慣れた包丁さばきを鑑賞することもこの料理ならではの醍醐味と言えるでしょう。実は刀削面の調理法は歴史と深い関わりがあり、知られざる誕生秘話がそこにはあります。
ほうれん草は栄養満点のスーパーフード。目の健康や心臓病予防、がん対策、さらにはダイエットや肌のアンチエイジングにも効果が期待できます!食卓に取り入れて、健康的な毎日を目指しませんか?
中国には、「一日の始まりに必要な7つのものがあり、それは、薪、米、油、塩、たれ、酢、お茶である」ということわざがあります。お茶は中国の文化の一部としてなくてはならないもので、客人にふるまったり、食後にたしなんだり、その長い歴史の中で育まれてきました。