中国マクロ経済学者で、人民大学国際通貨研究所理事兼副所長の向松祚(コウ ショウソ)氏(大紀元資料室)

中国著名な経済学者、最新講演でミンスキー・モーメントに言及

中国著名のマクロ経済学者であり、人民大学国際通貨研究所副所長の向松祚教授は1月20日、中国上海市で行われた経済フォーラムで、2019年にミンスキー・モーメント(すべての資産価格が急落する時)の到来に警戒せよと警告を発した。

向教授はこの日、約30分間の講演を行った。教授は、2018年から現在まで続く経済減速の具体的な数値について、「国内外の研究機関がそれぞれデータを出しているが、共通認識に達していない」と指摘した。昨年12月、向教授は中国人民大学で行った講演で、「国内経済研究機関の内部資料では2018年中国の国内総生産(GDP)成長率が1.67%と示した。しかも、マイナスである可能性もある」と述べた。

向教授によると、景気の冷え込みを招いた原因は4つある。

1つ目は、中国当局が金融リスクを低下させるためのデレバレッジ(債務削減)政策で企業が資金難に陥ったこと。

2つ目は、中国企業の収益が少ない。向教授は、中国企業が保有する巨額な負債によって収益が減少していると分析。「過去十数年、中国企業は凄まじい勢いで(事業)拡張してきた。企業の資産も負債も同時に拡大してきた。しかし、企業が持つ技術や収益、自己資金などで拡張したわけではない。銀行から借りてきた資金で、社債で、シャドー・バンキングで拡張した」

向教授によると、朱鎔基・元首相の息子で、中国大手投資銀行の中国国際金融(CICC)最高経営責任者(CEO)を務めた朱雲来氏はこれまで複数回、中国債務の総規模が600兆元(約9700兆円)を上回ったと警告し、「債務拡大による経済成長モデルは持続不可能だ」と強調した。

また、向教授は自身の体験を紹介した。「江蘇省のある銀行の幹部から、中国全国第1、あるいは第2の省内総生産を誇る江蘇省では、収益が10億元(約160億円)以上の企業は1社か2社しかないと聞かされて驚いた。中国株式市場に上場する企業のなかにも、収益が10億元以上の企業数も限られている」

教授は上場企業の収益が低いため、中国株式市場の不調が続くと予測する。

3つ目は、中国当局の私有制と民営企業を排除する姿勢により、民営企業経営者の心理が強く打撃を受けたことにあると示し、「2018年景気が悪化した最大の要因だ」と話した。教授は昨年12月の講演でも指摘した。

4つ目は、米中貿易戦で、「唯一の外部要因だ」

2019年経済情勢を展望

向教授は、2019年中国経済情勢について、中国当局の景気テコ入れ政策によって、2018年と比べて景気がやや改善できるとしたが、不確実性が依然として残っていると述べた。

「最大のカギは民営企業経営者の心理が改善できるかどうかにある」「付き合っているカップルのように、片方が相手をひどく傷つけたら、以前のような状況に戻れないだろう」と教授は述べた。

また、中国当局が現在、景気改善対策として、国内銀行に対して、中小企業への貸付を優先に促している。向教授は、過去十数年間において企業債務が急激に増えた結果、「現在大半の民営企業が融資を受けて設備投資を行う余裕がなくなっている」と指摘した。

向教授は、2019年中国経済にいくつかの「灰色のサイ(発生の確率が高いうえ、大きな影響力を持つ潜在的リスクのことを指す)」が現れる可能性が高いと予測し、そのうちの一つは不動産市場だとした。

「国内に大規模な人口の流入を見込める都市はもうない。需要が縮小している。現在中国人が保有する富の8割が不動産だ。中国の不動産時価総額は65兆ドル(約7100兆円)に達した。先進国の1年間の国内総生産(GDP)の合計に匹敵する」

教授は、「中国人がレバレッジでマネーゲームをしているが、最終的にそれは砂漠に現れた蜃気楼だと気づくだろう。この蜃気楼が消え去る頃が、ミンスキー・モーメントが訪れる時であろう」と警鐘を鳴らした。

「中国の金融システムは、資産に対する投資家や企業や個人の楽観的心理に基づいている。ある日、中国人が不動産市場、株式市場、ファンドなどすべての金融資産に失望した時、ミンスキー・モーメントが起きる」

向松祚教授は、中国の企業家や投資家は真の価値と富を創造することに精を出すべきだと苦言を呈した。

教授は、中国当局が「金融の安定化」を2019年の重要経済任務にした狙いは、ミンスキー・モーメントの発生を回避するためだとの見方を示した。「2019年、(ミンスキー・モーメントの発生に備えて)投資家の皆さんがまずリスク資産をしっかりと管理してください」と教授は講演を締めくくった。

インターネット上では、向教授の最新講演内容が再び注目を浴びた。ツイッターユーザー「両宋遺風」は21日、「向教授は講演中、何回も(中国経済失速の)根本原因は何かと参加者に問うた。参加者も教授も実際は心のなかで分かっている。根本原因は中国共産党の専制体制だ。しかし、誰もそれをはっきりと言い出せないでいる。中国社会が今直面しているすべての問題の根源について、中国政経界のエリートは皆分かっている」とのコメントを投稿した。

(翻訳編集・張哲)

 

関連記事
「孔子学院?新華社?こんなものはもう退屈だろう。中国が本当に世界的なソフトパワー拡大には、モバイルゲームに焦点を当てるべきだ」中国国内メディアは最近、100億米ドル規模に達している中国ゲームの影響力の高まりに自信を見せている。当局は、ゲームコンテンツを通じて中国文化の浸透工作や、親共産主義人物の人気獲得を促進したりしている。
日本料理の「五味五色」が生む健康の秘密。陰陽五行に基づく養生観が、日本人の長寿とバランスの取れた食文化を支えています。
2023年5月25日に掲載した記事を再掲載 若者を中心に検挙者数が急増する「大麻」(マリファナ)。近日、カナダ […]
中国共産党が7月に反スパイ法を改正し、邦人の拘束が相次ぐなか、外務省が発表する渡航危険レベルは「ゼロ」のままだ。外交関係者は邦人の安全をどのように見ているのか。長年中国に携わってきたベテランの元外交官から話を伺った。
日中戦争の勝利は中華民国の歴史的功績であるが、これは連合国の支援を受けた辛勝であった。中華民国は単独で日本に勝利したのではなく、第二次世界大戦における連合国の一員として戦ったのである。このため、ソ連は中国で大きな利益を得、中共を支援して成長させた。これが1949年の中共建国の基礎となった。