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6つの加齢現象と漢方医療

「年には勝てない」と、よく言われるように、年齢を増すとともに、体にもそれなりの変化が現れます。女性は、生理の変調など更年期の現象で加齢がはっきりと現れますが、男性の場合にはそのような変化を示す現象がないので、「年をとった」と自覚しない人もいるでしょう。

漢方医学の古典『黄帝内経』には、女性は35歳から、男性は40歳から初老の兆候が現れ、男女ともに最初に現れる現象は、髪が抜けやすくなるとことだと記載されています。その他にも、人間には以下の加齢現象が見られます。

視力減退

目の機能は肝臓と深い関係があります。肝臓の「蔵血」機能が弱くなると、視力も減退します。理論から言えば、50代から肝臓の機能は著しく弱くなるので、この時期から目のトラブルが現れやすくなります。また、肝臓に蓄えられている血液は、筋を養う機能があるので、「蔵血」機能が弱くなれば、筋を養う機能も弱くなり、筋が硬くなって、体の柔軟性が悪くなる傾向があります。

聴力の減退

耳の機能は腎臓と強く関係しています。加齢とともに腎臓の機能が弱まると、聴覚も次第に衰えます。理論では、40代から腎気が徐々に弱くなります。50代以後は腎気が著しく弱くなるので、この時期から耳鳴りや耳が遠くなるなどの症状が現れやすくなります。

性機能減退

精神的、あるいは心理的な要因を除けば、性機能の減退は腎気不足の現象です。腎は生殖機能をつかさどっているので、腎気が弱くなるとともに、性機能も減退します。この現象はやはり40代から始まり、50代以後に強く現れます。

歯が弱くなる

歯が弱くなり、汚れやすくなることも加齢現象の一つです。『黄帝内経』の記載によれば、40歳以後は歯の潤いが減り、歯の表面に汚れが付きやすくなります。更に年齢を重ねると、歯が緩んで抜けやすくなります。漢方医学では、歯は「骨の余り」だと考えられており、歯の強さは骨の強さと強く関連しています。骨は腎の精によって養われているため、骨と歯の強さは、腎臓の機能状態に強く影響されます。

記憶力の低下

記憶は脳の機能の一つですが、脳は腎の精によって養われているので、やはり腎の強さは記憶力にも影響を与えます。腎機能が弱くなると、脳細胞の働きも弱くなり、記憶力や集中力も弱くなりがちです。

腎を養って老化を抑制

以上の老化現象をみると、そのほとんどは腎機能にかかわっています。言い換えれば、腎の機能が強ければ、老化現象を抑制し、遅らせることができるのです。腎機能を守るには、山薬、黒ゴマ、黒大豆、クルミなどの食養生、漢方薬の腎気丸などの薬養生、腎兪、太渓などのツボを使う鍼灸治療で、ある程度の効果が得られます。しかし、最も重要なのは、欲を抑えて、心穏やかに日々を過ごすことでしょう。まさに「健康長寿の妙薬は心中にあり」です。

 

(翻訳編集・東山)

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