アングル:沖縄県民投票は反対7割、補選・参院選への影響に注目

竹本能文

[東京 25日 ロイター] – 沖縄県民投票が24日投開票され、政府が進める米軍普天間基地(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設をめぐり、辺野古沖の埋め立てに対して「反対」票が7割超の43万票超となった。

沖縄県知事が結果を尊重し、安倍晋三首相やトランプ米大統領に結果を通知すると定められた投票資格者総数の4分の1(28万8398票)を大幅に超えた。

県民投票に法的拘束力はなく、政府は埋め立て工事を継続する方針で、国と沖縄県の対立は一段と鮮明になりそうだ。また、今年4月の衆院補選やその先の参院選にどのような影響が及ぶのか、早くとも与野党間での「神経戦」が始まった。

県民投票条例は、3択のうち最も多かった選択肢の票数が投票資格者総数の4分の1以上となった場合に、知事に結果の尊重義務を課しており、玉城デニー知事は安倍首相とトランプ米大統領に速やかに結果を通知する方針。共同通信によると、沖縄県側は3月1日に安倍首相に会って結果を伝達したいという意向を持っているという。

菅義偉官房長官は25日の会見で「知事から要望があれば、しっかりと対応したい」と述べ、首相と知事の会談が行われる方向となっている。

だが、沖縄県と政府との間に存在する「辺野古移設」をめぐる見解の差は、全く埋まっていないと見た方がよさそうだ。

安倍首相は25日、記者団に対して「沖縄に基地が集中している現状は、到底容認できない。沖縄の基地負担軽減は政府の大きな責任だ。今回の結果を真摯に受け止め、これからも基地負担の軽減に向けて全力で取り組んでいく」と述べ、工事継続のスタンスを明確にした。

また、ここに来て辺野古沖の海底が軟弱地盤で、埋め立て工事の期間が長期化し、工費が大幅に増額される可能性が沖縄県から指摘され、工事反対派のトーンが一段と強まっている。

沖縄県は、移設コストが最大2兆5500億円と当初予算の10倍に膨らむと試算している。

これに対し、岩屋毅防衛相は「地盤改良でコストが増える可能性はあるが、そこまではかからないと考えている」と表明。政府高官は25日、住民投票が「移設工事前ならば意味はあった」と述べ、辺野古沖の埋め立て工事を粛々と継続する姿勢を示した。

<野党側、衆院補選に追い風の思惑>

一方、今回の投票結果が、今年4月の衆院沖縄3区の補欠選挙や夏の参院選に波及するのかどうか、与野党間で早くも様々な思惑が出ている。

昨年9月の沖縄県知事選では「移設反対」の玉城氏が圧勝。今回の住民投票で、反対票が玉城氏の獲得した約39万7000票を上回る43万4273票に達し、野党側のボルテージが上がった。

補選は、玉城氏の知事選出馬によって行われるため、統一候補を立てている野党側は、今回の住民投票の結果が、かなりの追い風になるとの見方を強めている。

ただ、夏の参院選に向け、野党側が弾みをつけたかといえば、そうとも言えない面もある。立憲民主党関係者のひとりは、立憲民主党と国民民主党の主導権争いが継続し「参院選の1人区以外での共闘は難しい」と話す。

また、政府・与党内では、基地を抱える沖縄県の反基地感情は同県特有で、安倍内閣の政権運営に大きな影響は出ない、と言い切る関係者が多い。

しかし、4月の衆院沖縄3区の補選で野党側が勝利すれば、32ある1人区で与野党対決ムードが醸成され、与党が大幅に議席を減らすリスクを懸念する関係者もいる。

統一地方選と参院選が重なる12年に1度の「選挙の年」が、どのような結末になるのか、早くも永田町では様々な「予想」が交錯し始めた。

(編集:田巻一彦)

2月25日、沖縄県民投票が24日投開票され、政府が進める米軍普天間基地(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設をめぐり、辺野古沖の埋め立てに対して「反対」票が7割超の43万票超となった。写真は宜野湾市の普天間飛行場。昨年3月撮影(2019年 ロイター/Issei Kato)
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