昨年5月、トヨタ自動車北海道の工場を視察した中国の李克強首相(左から2番目)とトヨタ自動車の豊田章男社長(左から1番目)(JIJI PRESS/AFP/Getty Images)

中国新エネ車の補助金削減 水素自動車にシフト 李首相の昨年トヨタ視察がきっかけか

中国財政部(財務省に相当)、科学技術部(文部科学省に相当)などは3月26日、新エネルギー車補助金政策に関する通知を公表した。当局の支援対象がこれまでのリチウムイオン電池を使った電気自動車EV)から水素自動車へ方針転換したことが明らかになった。EV企業は厳しい局面にさらされている。

補助金を50%以上削減したほか、中国当局は補助金の基準を一段と厳しくした。補助金支給対象となる電動自動車(EV)の1回のフル充電の走行距離を昨年の150キロから250キロに引き上げた。そして、2021年には補助金制度を完全に廃止するという。

中国当局は、水素自動車に関する補助金政策を新たに発表するとしている。

昨年5月中国の李克強首相が日本を訪問した際、北海道苫小牧市のトヨタ自動車北海道の工場を視察したことが、今回の方針転換に関係があるとみられる。李首相は、トヨタ自動車の水素自動車「MIRAI」に興味を示した。「MIRAI」は、3分間水素充填をすれば、650キロの走行が可能だ。

李首相は帰国後、国内の水素燃料電池産業を発展させるため、国務院の一部の行政部門から構成される「水素燃料電池連合小組」を設置した。中国メディア・華爾街見聞は昨年11月の報道で、「2018年は、中国水素燃料電池元年だ」とした。

今年3月の両会(全国人民代表大会と全国政治協商会議)期間中、中国当局が公表した「政府活動報告書」の中で、初めて「(EV)充電ステーションと水素ステーションなどのインフラ建設を推進する」ことに言及した。

補助金の削減で、リチウムイオン電池を使った新エネルギー車の国内メーカーは、収益が一段と悪化するとの見方が広がっている。

中国自動車メーカーの比亜迪汽車(BYD)は10年前にNEV市場に進出し、業界大手にまで成長した。中国メディア・捜狐網(3月29日付)によれば、2009~2017年までに同社が中国当局から支給された補助金は、56億3800万元(約936億円)に達し、2011~2015年までの純利益の合計額を上回った。2014年には、中国当局からの補助金は比亜迪汽車の収益の9割以上を占めたという。

3月27日、比亜迪汽車は2018年決算報告を発表し、同年純利益は、前年比約32%減の27億8000万元(約461億3100万円)となった。同社は、補助金の減少と開発研究費用の上昇が主因だとした。

中国当局は2009年、新エネルギー車産業を推進し始めた。中国当局はこの分野で外国企業を追い越すため、いわゆる「弯道超車(カーレース用語で、カーブで相手を追い越すことを指す)」の戦略を立てた。

2012年、中国当局は新たに「省エネと新エネルギー車産業発展計画」を発表し、2015年までに電気自動車とハイブリッド自動車の累計生産販売台数を50万台にする目標を掲げた。

中国当局は、2014~2016年まで、中央と地方政府機関に対して新エネルギー車の購入を促した。

大紀元コメンテーターの李林一氏は、中国当局は欧米企業に勝つため、巨額の補助金投入を決定したが、「中国自動車メーカーが補助金目当てに、NEV市場に寄ってたかった」と指摘した。

実際、2017年に財政部が93社の新エネルギー車企業を対象に行った調査の結果、72社が不正に補助金を取得しており、車1台につき約12万元(約199万円)総額92億元(約1529億円)をだまし取っていた。

「補助金は段階的に撤廃されるうえ、中国当局の支援対象が水素自動車にシフトしたことで、今後多くの自動車メーカーは淘汰されるだろう」

(翻訳編集・張哲)

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