中国軍の領空侵犯638回 無人機も初確認 防衛省と海上保安庁は対応増強へ

防衛省は4月、航空自衛隊による2018年のスクランブル(緊急)発進についてデータを公表した。同年は前年比95回増の999回で、統計を始めた1958年以来、過去2番目の多さとなった。こうした中国軍の海洋進出の活発化を受けて、政府は自衛隊と海上保安庁の警備と防衛強化を進めている。

スクランブル発進の記録の対象期間は、2018年4月1日から2019年3月31日まで。対象国・地域別の割合は、中国機約64%、ロシア機約34%、その他約2%だった。発進の対象領空は南西空域が最も多く、596回に及ぶ。

中国機に対する発進回数は638回で、前年比で138回増加した。初めて無人機も確認されている。奄美本島と宮古島の間の通過は過去2番目に多い10回。対馬海峡の通過は7回だった。

2018年はY-9情報収集機が奄美大島沖まで飛行したことや、Y-9哨戒機の初確認など、特異な飛行を19回確認した。ロシア機に対する緊急発進回数は343回であり、前年度と比べて47回減少した。Tu142哨戒機が日本周辺を長距離飛行したことや、Su-35戦闘機を初確認した。

東シナ海における中国機の飛行は活発化している。統計に入らない今年4月1日と15日にも、宮古海峡を爆撃機を含む中国機が飛行した。航空自衛隊はそれぞれスクランブル発進して対応している。

台湾の中央社によると、15日の中国軍機は、台湾南部のバシー海峡を抜けたあと宮古海峡を通過した。台湾国防部は戦闘機をスクランブル発進させたという。

日本国内メディアは、尖閣諸島周辺では中国船の海域侵犯、小笠原諸島付近では中国船が違法操業していると報じた。

活発な中国軍の動きを受けて、南西諸島の防衛と警備を強化している。海上保安庁は、18年度補正予算と19年度予算で合計251億円を計上した。新規着工1隻を含め、8隻の大型巡視船(1000トン以上)の建造を進めている。

3月14日には、3500トンの大型巡視船「みやこ」が進水した。造船企業の三井E&S造船玉野艦船工場が建造し、2020年に海上保安庁に引き渡される予定。同月8日には三菱重工業の長崎造船所で、海保最大となる6500トン型巡視船「れいめい」が進水した。

また、京都府舞鶴市の海上保安学校では10日、過去最多となる350人が入学。海上保安庁は、尖閣諸島海域などの警備で年々定員を増加させている。

奄美大島(鹿児島県)と宮古島(沖縄県)には3月26日、500人から800人規模の駐屯地が開設。今まで陸自の駐屯地は沖縄本島にしかなく、今回、九州南部から沖縄県まで1200キロの「空白」を埋める。防衛省は中期防衛力整備計画(2014~18年)で、南西諸島の防衛態勢の強化を盛り込んでいた。

(編集・佐渡道世)

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