台湾兄弟、日米最新ミサイルやF35戦闘機などの情報を盗むスパイ 中国軍から資金=FBI(GettyImages)

台湾人兄弟、日米最新ミサイルやF35戦闘機などの情報盗む 中国スパイ=FBI

カナダと米国の大学にそれぞれ務めていた、台湾出身の技術系教授2人は、長年にわたり、米国の軍事技術を盗む計画を企て、実行していた。米連邦捜査局(FBI)によると、2人が米国から盗み出した技術情報には、日米が所有する最新の空対空ミサイル、F-35戦闘機の詳細も含まれていた。カナダ紙ラ・プレス(La Presse)が報じた。

米国の会社から軍事技術を盗み中国企業に渡したとして、2018年に逮捕された台湾出身の教授の裁判がこのほど、ロサンゼルスの裁判所で開かれた。FBIは、逮捕された教授とその兄弟は、中国軍の最新兵器開発に関わるスパイだと主張した。

2018年1月19日、FBIは米国市民で米カリフォルニア大学の電気工学教授・石怡池(音訳、Yi-Chi Shih、62、台湾出身)と、Kiet Ahn Mai(63、ベトナム出身)を、米国の会社から、輸出許可を必要とする集積回路を違法に中国に輸出した容疑などで逮捕した。

6月7日付ラ・プレスによると、FBIがロサンゼルスの裁判所に提出した、石怡池教授から差し押さえた捜査資料には、日本と米国が所有する最新型空対空ミサイル、カナダを含む複数の北大西洋条約機構(NATO)諸国の次世代航空機、F-35戦闘機の詳細、軍用衛星、海軍戦闘システム、ミサイル防衛システムなど、最も洗練された軍事情報が含まれていたという。

十数年におよぶ、中国軍スパイによる米企業からの技術移転犯罪は、コンピューター不正アクセス、詐欺、電子違法取引、マネーロンダリングなど、あらゆる容疑で米当局に追及されている。

石怡池教授らによる技術窃盗の被害を受けた米企業は、モノリシックマイクロ波集積回路(MMIC)と呼ばれる特殊な高速コンピューターチップを製造していた。同企業の取引先は、米空軍、海軍、国防高等研究企画局など。レーダーシステム、妨害装置、緊急出動(スクランブル)などに使用される。

FBIの押収した、石怡池教授らの所有資料から、不正入手したMMICを大量生産する中国の大型工場の建設計画が明らかになった。

石怡池教授とMaiは、米企業の保護されたコンピューターに不正アクセスして技術入手を試みた。他にも、顧客を装って、米国モデルのMMIC技術を入手しようとしていた。FBIは、中国への集積回路の技術移転を狙ったとしている。

この不正な技術移転計画には、石怡池教授の兄弟で、カナダのマギル大学で電気工学を教えるカナダ籍教授・石怡祥(音訳、Ishiang Shih)も手伝っていたとして、FBIは追及している。

AFP通信2018年1月26日の報道によると、石怡祥教授は容疑を否定している。同記事は、石怡祥教授が自身の教授職の立場を利用して、集積回路の情報を入手した疑いがあると報じている。

FBIによれば、石兄弟らは2006年頃から米国技術の窃盗を始めたという。

このほど、FBIがロサンゼルスの裁判所に提出した資料によると、石兄弟はカナダ、米国、中国成都をたびたび訪問し、ミサイル誘導システムに関する開発計画の詳細な情報のやり取りなどをしていた。

カナダ政府傘下組織と中国軍から支援を受けていた兄弟

ラ・プレスによると、石怡祥教授は、集積回路の開発のために、カナダ政府傘下・国家科学技術研究所から、50万カナダドルの支援を受け取っていた。さらに、同紙が伝えたFBI捜査官の発表によれば、2人の兄弟は、中国人民解放軍の研究開発資金も受けていた。

FBIによると、米国企業のMMICのサンプルは、石怡祥教授が会長を務める、中国の成都嘉石科技公司(CGTC)に送られていた。同社は2014年、商務省は安全保障および外交政策の利益に反する活動があるとして、取引を規制する「エンティティリスト」に登録されていた。

成都嘉石科技公司は、同日にエンティティリストに加えられた、石怡祥教授が管理するロサンゼルス拠点の企業プルマン・レーン(Pullman Lane Productions)から、出資を受けていた。プルマン・レーンは、複数の中国企業から出資されている。

FBIによると、石怡祥教授は資産を中国、カナダ、香港、マカオ、アメリカに分割して保有している。

石兄弟は2015年、カナダ宇宙局の次世代RADARSAT(レーダーサット衛星)に使用される集積回路の開発のための入札を行ったこともある。最終的に、2人がこの入札を勝ち取ることはなかった。

米捜査当局はカナダ司法当局に対して、10月までにカナダ籍の石怡祥教授の身柄引き渡しを求めている。しかし現在まで、カナダ当局は「検討中」にとどまっている。

(編集・佐渡道世)

関連記事
湖南省株洲市の湘江で、ウイルスサンプル収集用試験管が大量に発見され、住民たちは感染リスクに怯えています。当局は「未使用で損傷はなく、ウイルスは検出されなかった」と発表しましたが、専門家や市民の間で疑問の声が広がっています。試験管の正体や流出の経緯について調査が進む中、不安は収まりません。病院も研究所を信用できないのは間違いない。中国ではコロナが収束していないというのは、こういうことなのか?
米司法省は最近、IR事業をめぐり日本の政府関係者に賄賂を渡すよう指示して、中国企業のCEOを海外腐敗行為防止法違反の容疑で起訴した。
ニセモノ摘発も命がけ、道徳低下した中国社会。中国福建省の展示会で、偽商品の摘発を目的とするインフルエンサーが暴行を受ける事件が発生しました。「福建鉄鉄」のカメラマンが問題商品を通報したことがきっかけで、出品者らから集団暴行を受けたとされています。この事件は、中国SNSやメディアで大きな注目を集めており、現在、市場管理局と公安当局が調査を進めています。偽商品撲滅の活動が招いた事件の経緯とその背景に迫ります。
19日、中国江蘇省連雲港市にある国有企業「中国化学工程第十四建设有限公司」の正門前で、ある女性が滞納された給料の支払いを求めて会社管理者の足に抱きつき泣き叫ぶ姿が撮影されました。この動画はSNSを通じて拡散され、多くの人々に衝撃を与えています。女性の訴えに耳を貸さない企業の対応と、中国社会で頻発する同様の問題に、ネット上では悲しみと怒りの声が相次いでいます。「惨め過ぎる」労働者の姿。官製メディアが宣伝する「盛世(繁栄)」中国のリアル。経営者が人間なのか? 人間であれば、会社をつぶす決意をして、会社財産を売って、給料を支払うはずだが。
湖北省武漢市で、配達食注文に対するクレームが原因で、配達員がナイフを持って客の家に押し入ろうとする衝撃的な事件が発生した。監視カメラには、ドアを内側から押さえる家主と、外でナイフを振り上げながら脅す配達員の姿が記録されている。この事件をめぐり、SNSでは中国社会のストレスや労働環境への懸念が噴出。「極限状態にある人々の行動は予測不能」といった声も広がっている。 至るところに「火薬庫」の中国、言動を慎まないと、いつどこで殺されるかわからない。