北朝鮮がミサイル発射、1週間余りで3度目 米韓に圧力継続

[ソウル 2日 ロイター] – 北朝鮮は2日、1週間余りで3度目となるミサイル発射を実施した。軍事能力を向上すると同時に、米韓が近く予定する合同軍事演習の中止に応じるよう揺さぶりをかける狙いがあるとみられる。

韓国政府は、北朝鮮がこの日発射した飛翔体は新型の短距離弾道ミサイルのもようだとの見方を示した。韓国軍合同参謀本部によると、飛翔体は220キロ飛行し、高度は25キロに達した。

米政府当局者は、北米の脅威とならない飛翔体が少なくとも1発検知されたとした上で、複数の飛翔体が発射された可能性もあると述べた。複数の米政府当局者は、当初入手した情報によると、最近実施された2回の短距離ミサイル発射実験と似ているという。

北朝鮮の国営メディアは、金正恩朝鮮労働党委員長が7月31日、新型の大口径多連装ロケット砲の試射に立ち会ったと報じていた。金委員長は25日の短距離弾道ミサイル発射実験にも立ち会った。

韓国の梨花女子大学校で国際関係を専門にするレイフエリック・イーズリー教授は、北朝鮮の発射実験は非核化協議に向けた同国の要求を示唆しているほか、軍事能力向上への熱心な取り組みを反映していると指摘。

「北朝鮮の隣国を威嚇する能力を高めることだけが目的ではなく、制裁違反である発射実験を、韓国の防衛演習と同様に正当なものとして、規定路線にするという狙いもある」とした。

トランプ米大統領はホワイトハウスで記者団に自身が金委員長に試されていると思うかと問われ、ミサイル発射は金委員長がトランプ氏に約束した事項に違反していないと述べて、問題視しない姿勢を示した。

発射されたのは短距離ミサイルで、「それに関する合意は一度も交わしていない。問題ない」と語った。

トランプ氏は短距離ミサイルに関する合意はないとしたが、国連安全保障理事会は2006年、弾道ミサイル開発関連活動を全て停止し、ミサイル発射実験の一時停止に関する過去の合意を復活させるよう北朝鮮に要求することを全会一致で決定している。

安保理は1日、非公開で会合を開催し、直近のミサイル発射実験について協議。英独仏は会合後に北朝鮮に対し、米国との「有意義な」協議を行うよう要請し、北朝鮮が核・弾道ミサイル計画を廃棄するまで国際的な制裁を完全に執行する必要があると発表した。

日本の防衛省は2日、北朝鮮のこの日の発射について、「我が国領域や排他的経済水域(EEZ)への弾道ミサイルの飛来は確認されておらず、現時点において、我が国の安全保障に直ちに影響を与えるような事態は確認されていない」と発表した。

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