大阪で中国人が国歌斉唱 米VOA「海外愛国主義の矛盾」を指摘

8月23日夜、大阪の繁華街で、集会を行っていた香港デモ支持者に対して、中国人留学生らは中国国歌を斉唱しながら反発した。ツイッター上では、この異様な光景に違和感を覚えるとの声が上がっている。

6月から始まった香港市民による逃亡犯条例改正反対デモで、同様の集会が世界各地で行われている。8月16日、豪州の香港人留学生が開催したデモ支持集会に中国人留学生が殺到し、下品な言葉を大声で叫び、香港人留学生を罵倒した。

同じ頃、英国ロンドンで、中国人留学生らは、香港デモ支持者に抗議して、英語で卑猥な文言が書かれた横断幕を掲げた。留学生らの行動は、全世界に対して中国当局の支持者がいかに横暴で低俗なのかを見せつけた。この様子に、中国国内のネットユーザーと海外の専門家は驚きのあまり言葉を失った。

中国人ネットユーザーの間では近年、「離岸愛国主義(海外で行わている愛国主義運動や集会)」という言葉が流行っている。特に香港デモをきっかけに、中国人ネットユーザーの間では、「海外の愛国者」が見せた強がりとおかしさについて、再び熱烈な議論を展開し始めている。

ネットユーザーは、この一部の中国人が中国から離れても「非常に愛国している」というところを嘲笑している。今の中国では、「愛国」という言葉は、中国共産党政権を擁護することを指す。ネットユーザーは、一部の中国人が財産や家族を海外に移し、西側で民主・自由を享受しながら、海外で中国共産党の独裁政治を支持する活動を行うことに非常に怒りを感じている。「そんなに愛国なら、中国で暮らせばよかったのに」とその矛盾をつく声もある。

米ボイス・オブ・アメリカ(VOA)25日の記事によると、多くの中国問題専門家やメディアは、中国共産党が「海外愛国主義者」を後押ししていると気づいた。香港の抗議デモをめぐって、欧米各国の親中派中国系住民と中国人留学生も相次いで集会を開き、香港問題に関する中国当局の立場を支援すると示してきた。中国官製メディアと各地の中国大使館は、留学生らの「愛国主義」の言動を称賛している。

その一方で、多くのネットユーザーは、中国当局が国内の国民に対しては、愛国集会の開催を認めていないと批判している。

例えば、8月18日、香港で大規模な抗議活動が行われるとの情報が伝わると、一部の愛国ネットユーザーは、これに対抗して、同日、中国北京市の天安門広場で中国当局や香港警察を支持し、中国の国旗を守る「護国旗」集会を行おうと呼び掛けた。しかし、中国当局はこの提案を称えるのではなく、逆にネット上でこの呼び掛けに関する情報封鎖を行った。同時に、当局はこの日、天安門広場とその周辺に警戒態勢を敷き、いかなる集会も禁止にした。

なぜ、海外では愛国集会を宣伝し称賛する中国共産党が、国内では同じ集会を開くことに恐怖を感じるのだろうか?

カナダ在住の中国人作家で人権活動家、盛雪氏は「中国共産党という全体主義の暴力的政権下では、国民が共産党への支持を示すことすら、『潜在的な脅威』と見なされる恐れがある」と指摘した。

「中国当局は、人々が公に自分の意見と見解を主張することと、人々が集まることに圧力を感じる。当局は、多くの国民が公の場で意見を主張し始めると、世論が急激に変わり、政権への不満も同時に爆発させるのではないかと強く警戒している」

盛雪氏は、1989年に起きたルーマニア革命を例にした。同年12月21日、首都ブカレストで、ルーマニア共産党政権は10万人の市民を動員し、最高権力者であるチャウシェスク党書記長を支持する集会を開催した。この集会では、反体制活動家による爆弾事件が起き、最終的に集会は強制的に解散させられた。その後、集会参加者に新たに大学生や市民が合流し、反チャウシェスク政権の抗議デモに発展した。政権側が派遣した警官隊は、市民に発砲し、多数の死傷者を出した。この出来事が発端となり、同月末にチャウシェスク独裁政権は崩壊した。

中国人権派弁護士の祝聖武氏は、「中国当局は、『民族主義』というカードを利用しているが、このカードには同時にリスクも伴っていると心得ている」との見方を示した。中国と日本の外交関係が悪化した2012年9月、中国当局はこのカードで、国内の反日デモを主導した。

「当時、この反日デモで中国国民が所有する日本車が次々と破壊され、国民の財産に大きな損失をもたらしたため、デモが進むにつれ、反共産党政権の声が上がった。結局、当局は各地の反日デモを禁止した」

また祝氏による、中国当局が2017年、在韓米軍の高高度防衛ミサイル(THAAD)配備で、米政府に協力を示した韓国政府に対して、中国国民を動員して民族主義と愛国主義をあおり、ボイコット運動を行った際も、国内での「民族主義運動」はコントロールしにくいということに気づいた。

「今までの教訓に基づいて、当局は現在、香港問題で国内での愛国集会を許可せず、代わりに海外での集会を誘導したのだ」

盛雪氏は、今回の香港デモをめぐって暴言や暴行を振るう中国人留学生の言動について「悲しい」と話した。「偶発的なことではない」とした。

「留学生らが一時的に理性を失ったために行ったことではない。また共産党の洗脳を受けて、留学生らが真相を見分けられなくなったことでもない」

「これは、長年、中国当局が反文明的な教育を国内で実施した結果だ。中国共産党政権は設立当初から、下品な言葉遣いを好んでいた。この結果、今、有名な芸能人も含めて、多くの中国人が公の場で顔色も変えずに下品な言葉で人を罵るのだ。若い世代はこのような歪んだ環境で育ち、教養を身につけることもなく、国際社会の普遍的な価値観に触れることすらない。だから、抗議の正しいやり方が分からないのだ」

一方、8月18日、カナダのトロント市で開催された香港警察支持集会に、一部の留学生が高級スポーツカーのフェラーリで参加した。これも中国人ネットユーザーがあざ笑う話題となった。

ネットユーザーは、高級車の所有者らは腐敗官僚の子女だと指摘し、「彼らとその家族がこれほど大金持ちで、ほとんどのカナダ人が買えないような高級車を購入できたから、愛国していることに納得だ」「彼たちと比較すると、普通の中国人には明らかに愛国する資格がないことが分かる」と皮肉った。

中国当局が支配している海外愛国者らは、共産党を持ち上げる宣伝活動を行っている同時に、当局にさまざまなトラブルをもたらし、頭を悩まさせている。中国ネット検閲当局はネット上に投稿された留学生らが罵詈雑言(ばりぞうごん・口きたなくののしること)を浴びせる様子や、高級車を乗り回す様子を捉えた動画や写真などをすべて削除した。

(翻訳編集・張哲)

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