IMF、世界経済3%縮小を予想 大恐慌以来最悪の景気後退

国際通貨基金(IMF)は4月14日、世界経済成長予測レポートを発表した。中共ウイルス(新型コロナウイルス肺炎、COVID-19)世界的流行の影響で、2020年の世界経済は3%縮小すると予測している。IMFは、コロナ禍以前の1月からの見通しにより、6.3ポイントも下方修正した。

IMFは、各国が流行病対策を講じたことで世界全体が「大封鎖」に陥り、2009年のリーマンショック世界金融危機)による0.1%の収縮をはるかに上回り、100年前の大恐慌以来最悪の景気後退となると予想した。

IMFは、ほとんどの国での流行に必要な予防・抑制行動により、第2四半期にピークを迎え、下半期に沈静化すると推測している。広範に渡る各国の政策行動は、企業の債務超過、失業の長期化、系統的な金融ストレスの防止に効果的だとした。また、これにより、2021年の世界経済の成長率は5.8%と予想している。

いっぽう、厳しいシナリオも想定している。今回のパンデミック危機による公衆衛生危機の持続期間は不確実性が高い。もし、世界的流行が今年後半にも勢いを失わず、感染拡大防止措置が長引き、金融環境が悪化すれば、世界のサプライチェーンがさらに崩壊する可能性もある。この場合、世界GDPの落ち込みはより大きくなる。また、パンデミックが2020年のもっと遅い時期まで続けばGDPは今年さらに3%、2021年に入っても続けば来年は8%、それぞれベースライン・シナリオより低くなると予測している。

これらのデータ予測と同時に、文書を発表したIMFジータ・ゴピナート(Gita Gopinath)経済顧問兼調査部門代表は、「前例のないグローバルな危機に免れることのできる国はない」と形容した。同氏によると、パンデミック危機による2020~21年の世界GDPの損失は合計約9兆ドルに達する可能性があり、これは日本とドイツのGDPの合計を上回る。

経済崩壊の影響が特に深刻なのは、観光、旅行、ホスピタリティ、エンターテインメントなどの分野に経済成長を依存している国になるとみられている。新興国や発展途上国は、世界的なリスク選好の弱まりで、資本フローの前例のない逆流から、通貨下落の圧力にさらされている。また、IMFは、財政が弱いまま債務超過になるなど、危機的な状態で今回の危機に突入した国も複数あるという。

IMFの予測によると、先進国経済は今年6.1%縮小し、通常では先進国経済よりも超えるはずの新興国と発展途上国市場でも、1.0%の縮小が予想される。中国を新興国から除外すると、2.2%の縮小となる。また、170カ国以上で1人当たり所得が縮小し、先進国や新興国、途上国は2021年までにある程度回復すると予測している。

IMFは、アジアの新興国・発展途上国のうち、中国とインドは2020年に1.2%、1.9%のプラス成長となるが、東南アジア諸国連合(ASEAN)の5カ国は、0.6ポイント縮小すると予測している。

中国の経済活動は疫病対策で年初の2カ月間で停止し、生産部門は予想以上に急落した。4月中旬、中国は第1四半期の経済成長データを発表する。

14日に行われた62人の経済アナリストを対象としたロイターの調査によると、中国経済は、第1四半期に前年同期比で6.5%縮小するという。これは、中国が1992年に四半期ごとのGDPデータを発表し始めて以来、初めてのマイナス成長になる。これらのアナリストの2020年の中国経済成長予測の中央値は2.5%で、IMFの予測を上回った。

しかし、一部の分析では、中国の公式経済データは信頼性が低いとみており、国内インフラや他国の経済に基づく予測では上記のGDP推計よりもさらに低くなると考えている。世界有数の独立経済調査会社キャピタル・エコノミクス(Capital Economics)は、電力消費量などを代替的な基準として、より現実の経済活動に近いものになるとみている。これらの代理値を分析すれば、2020年第1四半期の中国のGDPは、昨年同時期比で16%縮小し、通年では3.0%縮小するという。

そのほか、IMFは、世界の財・サービス貿易量は2020年に11%縮小し、来年は8.4%成長すると予想している。また、先進国の消費者物価が2020年に平均0.5%、2021年には1.5%上昇すると予想した。

IMFは同日に発表した世界金融安定報告書で、新型コロナウイルス危機は、世界の金融システムの安定性にも深刻な脅威をもたらすと警告した。 各国や中央銀行は投資家心理の安定化に向けて行動してきたが、IMFは、金融情勢がさらに引き締められるリスクが残っているとみており、中央銀行は景気を支えるために信用フローを増やすことを検討する必要があるとしている。

IMFによると、地域の封鎖措置によって新型コロナウイルスの流行の広がりを抑え、衛生保健システムの対応を可能にして、経済活動が再開できるようになるとみている。IMFは、各国の政策立案者に対し、流行の抑制期間中の国民生活のニーズに対応し、景気回復のための計画を立てるよう呼び掛けている。

IMFは、多国間協力が世界的な健康回復に不可欠であると強調している。 IMFは、脆弱な国々を支援するために、迅速な緊急融資や最貧国の加盟国への債務救済など、1兆ドル規模の融資を積極的に展開するとした。

IMFのゴピナート氏は「公衆衛生危機がいずれ終わるという希望の兆しはある。各国は少なくとも今のところ、社会的距離を確保する措置、検査、感染者と接触した人の追跡によってウイルスの拡散防止に成功しており、治療法やワクチンは予想よりも早く開発されるかもしれない」「世界は、次に何が起こるのかという大きな不確実性に直面している。危機の規模とスピードに応じて、国内外の政策対応は大規模かつ迅速に行い、新しいデータが入手可能になった時点でタイムリーに調整される必要がある」と分析した。

(翻訳編集・佐渡道世)

関連記事
2023年5月25日に掲載した記事を再掲載 若者を中心に検挙者数が急増する「大麻」(マリファナ)。近日、カナダ […]
中国共産党が7月に反スパイ法を改正し、邦人の拘束が相次ぐなか、外務省が発表する渡航危険レベルは「ゼロ」のままだ。外交関係者は邦人の安全をどのように見ているのか。長年中国に携わってきたベテランの元外交官から話を伺った。
日中戦争の勝利は中華民国の歴史的功績であるが、これは連合国の支援を受けた辛勝であった。中華民国は単独で日本に勝利したのではなく、第二次世界大戦における連合国の一員として戦ったのである。このため、ソ連は中国で大きな利益を得、中共を支援して成長させた。これが1949年の中共建国の基礎となった。
香港では「国家安全法」を導入したことで、国際金融センターとしての地位は急速に他の都市に取って代わられつつある。一方、1980年代に「アジアの金融センター」の名声を得た日本は、現在の状況を「アジアの金融センター」の地位を取り戻す好機と捉えている。
米空母、台湾防衛態勢に 1月29日、沖縄周辺海域で日米共同訓練が挙行された。日本からはヘリコプター空母いせが参 […]