【紀元曙光】2020年4月20日
40年ほど前、セルバンテスの長編『ドン・キホーテ』の岩波文庫6冊に挑戦したが、風車にはねかえされるように、途中で挫折した。
▼読んでいて筋が分からなくなり、半分も行かないうちに放り出してしまった。ただ、物語の根幹の部分は、筆者のその後の人生のなかで、不思議と飲み込めたように思う。
▼騎士道物語に耽溺するあまり、気がおかしくなった老人がいた。自身を、3世紀前の遍歴の騎士ドン・キホーテであると思い込み、従僕サンチョ・パンサとともに冒険の旅に出る。彼方に見えた粉挽きの風車を巨人と見て挑みかかり、あえなく跳ね飛ばされる。
▼何でこんな話で進んでいくのかと、いつしか考えさせられている。人々に嘲笑される騎士の狂気のなかにこそ真実があり、作られた事実のほうが虚偽であるという、大きな逆転構造になっていることに、読者は引き込まれているのだ。
▼命の危険は覚悟の上で、赤い鉄壁にぶち当たっていく人々がいる。すでに市民ジャーナリストの何人が消息不明になっていることか。それも承知の上で湖北省政府を提訴したのは、同省宜昌市の譚軍さん。ごく普通の市民であり、児童公園管理処に勤務する公務員である。
▼中共ウイルスについて「省政府が感染情報を隠蔽したため、被害を拡大させた」として、行政の責任を問うた。今の中国は法の上に「党」がある。そんな奇形国家で、法の正義が通るはずもない。譚軍さんは、たとえ命が絶たれても、精神の「かたち」となって天下へ呼びかけようとしている。「いざ、我に続け」。この壮絶なドン・キホーテを、誰が笑えるか。
関連記事

春夏は“木火”の季節。体の内側から整えるには「金水(肺と腎)」のケアが鍵です。黒きくらげと白きくらげを使った簡単レシピで、陰陽のバランスをおいしく調えましょう。

海と大陸を結ぶ運河の国、パナマ。歴史ある街並みと世界遺産、美食とにぎわい、そして巨大貨物船が行き交う運河の絶景をめぐる濃密な24時間をご紹介します。

スムージーだけじゃない!チアシードは心臓や腸を守る栄養の宝庫。オメガ3、繊維、鉄分が豊富な理由と、手軽に取り入れる方法をご紹介します。

タブレットやPCより手書きが脳に効く?最新の脳波研究が明かした、書くという動作が記憶や創造力に与える効果と、その驚きの仕組みとは。

森の中で不思議な出来事が起きたクマ。怒りと冷静さの違いが生む結果とは?冷静に行動する大切さを教えてくれる、おもしろくてためになる物語です。