始皇帝と仙人の出会い
中国戦国時代の始皇帝(しこうてい、紀元前259~210年)は、仙人術を好んでいた。不老不死の仙薬を求めて徐福を海外に派遣した伝説は、よく知られている。なぜ始皇帝はそれほどまでに仙人の存在を信じていたのだろうか。それは、始皇帝が実際に仙人と会った経験があるためだと言われている。東晋時代(317~420年)に王嘉(おうか)が編集した『拾遺記』(しゅういき)の中に、始皇帝が仙人と出会った時のことが記されている。
「宛渠(えんきょ)というところから不思議な人がやってきた。この人は螺旋状の舟に乗っており、その螺(マキガイ)のような形状の舟は、海の底を航行しても水が船内に侵入しない。舟の名は『淪波舟』という。この人の身長は10丈(1丈は2.8メートル)ほどで、鳥獣の毛を編んで衣にしている。始皇帝が彼と天地開闢時のことを論じると、彼はその時のことをまるで見てきたかのように詳しく語った」
この人曰く、「私は小さい時から空中を往来し、一日に万里も移動できる。年を取ってからは、遠い場所で起きている出来事がここに座ったままで分かるようになった。私の国は咸池の日没のところにあり、向こうの一日はこちらの一万年に当たる。そこは曇りと霧の日が多く、晴れた日には黒い龍と鳳凰が飛び回る。夜は石を燃やして照らす。この石は燃山から取ってきたもので、よく光り、米粒ぐらいの大きさの石一つで大きな部屋を明るく照らすことができる。この石をほんの少し河の中に投げ入れると、たくさんの泡が湧き出て数十里先まで流れていく」
始皇帝はこの話を聞くと、「この人は神人に違いない」と言った。この経験によって始皇帝は仙人の存在を信じるようになり、仙薬を探し求めるようになったという。
(翻訳編集・雲林)
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