中国、オランダの大学研究を政治化 科学者が「介入に感覚麻痺している」=オランダ研究機関
オランダの最新研究レポートは、同国の教育における中国共産党の影響力が、学術の自由および表現の自由の侵食に繋がっていると警鐘を鳴らした。中国共産党政権はすべての研究分野を政治化しようとしていると指摘した。
クリンゲンダール国際関係研究所のイングリッド・ドーヘ(Ingrid d’Hooghe)氏らがレポートで、中国がオランダの中国人学生や研究者、および中国をめぐるオランダの研究に対して、どのように政治的影響力を行使しているのかを調査した。それによると、オランダの全大学が中国および中国の研究機構と繋がりを持ち、あらゆる研究分野に中国との共同研究プログラムがあるという。
オランダは多数の中国留学生を受け入れ、中国人留学生の人数はドイツとイタリアに次いで、ヨーロッパでは3位となっている。
また、中国研究をしているオランダの研究者のほとんどは自己検閲を行っている。例えば、ウイグル人問題や中国の労働条件に関する研究は避けられている。その結果、中国に関するオランダの理解が不足し、研究の質が低下しているとレポートは指摘した。
このレポートをまとめるにあたって、100人以上の学生や、研究員にインタビューを行った。
ドーヘ氏は同国メディアに対して、「これは避けるべき話題で、これは積極的に取り上げるべき話題で、そして中国共産党を批判するな、など全てが政治化されている。ウィグル問題、中国の労働条件に対する研究が禁止されており、この分野の研究者は困難に直面している」
一方、中国共産党の介入について、多くの研究者は感覚が麻痺している。ドーヘ氏は、「多くの研究者は自己検閲を多少受け入れている、中国の科学者だけでなく、それ以外の研究者も中国共産党が設けた障壁に慣れてしまい、解決しようともしない。それが当たり前のようになっているが、科学規範および価値観に反している」と話した。
このようになってしまった原因は「利益」であると、ドーヘ氏は説明する。「中国からの留学生が4700人、博士号を持つ研究員が1000人以上もいる。彼らは重要な資金源と人材になっている。一定のレベルの研究を維持するために彼らはなくてはならない存在だ」
また、オランダと中国の研究機関の間で結んだ協定では、中国は強い立場にある。研究のある部分は公開しない、データを公開してはいけない、などの取り決めがある。「協定内容は中国に有利になっている場合が多い」と同氏は述べた。
一方、中国で研究活動を展開しようとするオランダの研究者は中国当局からビザの不発給などの圧力を受けている。中国にいても中国共産党政権がタブー視する話題については言及していない。
同氏は「もちろん、良い研究もなされているが、中国との共同研究をより批判的に見る必要があり、時にはノーと言う方が良い」との見解を示した。