欧州委員会のウルズラ・フォンデアライエン委員長(FRANCOIS WALSCHAERTS/POOL/AFP via Getty Images)

EU委員長が初の一般教書演説、中国人権問題で「マグニツキー法」立法を示す

欧州委員会のウルズラ・フォンデアライエン委員長は9月16日、欧州議会で、就任後初めての一般教書演説を行った。対中政策に関して、委員長はより強硬な姿勢を示した。同委員長は、人権侵害に関わった中国当局の高官に制裁を科すため、欧州連合(EU)の「マグニツキー法(Magnitsky Act)」の立法を推進していくと表明した。

フォンデアライエン委員長は約1時間余りの演説の中で、中共ウイルス(新型コロナウイルス)の大流行後の経済、気候変動、外交政策のビジョンを語った。

外交政策の面において、委員長は、欧州は世界情勢の中で明確な立場をとり、迅速に行動する必要があることについて言及した。中国問題に関して、「欧州と中国の関係は、現在、最も重要であると同時に、最も多くの課題を抱えている」と話した。

フォンデアライエン委員長は演説の中で、中国当局に対して、2020年以降の温室効果ガス排出削減などを定めた国際枠組み、パリ協定の公約を順守するよう呼びかけた。また、委員長は、欧州と中国の間の長年にわたる貿易不均衡、中国の市場アクセス、過剰生産能力問題に関して、さらなる改善を期待するとした。委員長は、中国が市場開放を行わないのなら、EUは今後、報復措置を検討すると示唆した。

民主主義と人権に関しては、委員長は「香港にしても新疆にしても、いかなる場所いかなる時でも人権侵害の行為が発生すれば、EUは必ず毅然たる態度で訴えていく」とした。 

EUの一部の加盟国は中国と経済的な結びつきが強いため、親中的な立場をとり、中国国内の人権侵害を批判することに躊躇している。この実態について、フォンデアライエン委員長は演説中、「EUの価値観に基づく単純な声明でさえ、なぜ他の動機によって延期され、骨抜きにされ、他人に左右されるのか」と異例の批判をした。加盟国のこれらの問題への対応が遅すぎると苦言を呈した。

フォンデアライエン委員長によると、欧州議会ではこれまで、EUの「マグニツキー法」の立法を求める声が絶えなかった。委員長は、演説の中で「直ちにマグニツキー法に関する決議案を議会に提出する」と表明した。

フォンデアライエン委員長は、香港問題やベラルーシ問題などの国際的な事件において、EUは明確な立場をとり、迅速に行動をすべきで、米国を始めとする同盟国とのパートナーシップを深めなければならないと語った。

「米ホワイトハウスの政策について、EUは常に同意することはできない。しかし、EUは大西洋をまたぐ(EUと米国の)同盟関係を重要視している。これは、共通の価値観および歴史、人々の間の切れない絆に基づいている」

フォンデアライエン委員長は、貿易、ハイテク技術、関税問題などの分野において、米国との連携を強化していく考えを示した。

いっぽう、9月14日、フォンデアライエン委員長らのEUの首脳は、中国の習近平国家主席とオンライン形式で首脳会議を行った。EU側は、中国当局に対して市場開放を求めたほか、香港市民の安全や新疆ウイグル自治区などの少数民族への待遇に関する懸念を提起した。習近平氏は、「中国の内政問題」として反発。双方が強く対立したため、共同声明も出されなかった。

(翻訳編集・張哲)

関連記事
湖南省株洲市の湘江で、ウイルスサンプル収集用試験管が大量に発見され、住民たちは感染リスクに怯えています。当局は「未使用で損傷はなく、ウイルスは検出されなかった」と発表しましたが、専門家や市民の間で疑問の声が広がっています。試験管の正体や流出の経緯について調査が進む中、不安は収まりません。病院も研究所を信用できないのは間違いない。中国ではコロナが収束していないというのは、こういうことなのか?
米司法省は最近、IR事業をめぐり日本の政府関係者に賄賂を渡すよう指示して、中国企業のCEOを海外腐敗行為防止法違反の容疑で起訴した。
ニセモノ摘発も命がけ、道徳低下した中国社会。中国福建省の展示会で、偽商品の摘発を目的とするインフルエンサーが暴行を受ける事件が発生しました。「福建鉄鉄」のカメラマンが問題商品を通報したことがきっかけで、出品者らから集団暴行を受けたとされています。この事件は、中国SNSやメディアで大きな注目を集めており、現在、市場管理局と公安当局が調査を進めています。偽商品撲滅の活動が招いた事件の経緯とその背景に迫ります。
19日、中国江蘇省連雲港市にある国有企業「中国化学工程第十四建设有限公司」の正門前で、ある女性が滞納された給料の支払いを求めて会社管理者の足に抱きつき泣き叫ぶ姿が撮影されました。この動画はSNSを通じて拡散され、多くの人々に衝撃を与えています。女性の訴えに耳を貸さない企業の対応と、中国社会で頻発する同様の問題に、ネット上では悲しみと怒りの声が相次いでいます。「惨め過ぎる」労働者の姿。官製メディアが宣伝する「盛世(繁栄)」中国のリアル。経営者が人間なのか? 人間であれば、会社をつぶす決意をして、会社財産を売って、給料を支払うはずだが。
湖北省武漢市で、配達食注文に対するクレームが原因で、配達員がナイフを持って客の家に押し入ろうとする衝撃的な事件が発生した。監視カメラには、ドアを内側から押さえる家主と、外でナイフを振り上げながら脅す配達員の姿が記録されている。この事件をめぐり、SNSでは中国社会のストレスや労働環境への懸念が噴出。「極限状態にある人々の行動は予測不能」といった声も広がっている。 至るところに「火薬庫」の中国、言動を慎まないと、いつどこで殺されるかわからない。