【紀元曙光】2020年10月8日
カドミウムという重金属の名称を聞くと、ある特殊な感覚を想起してしまう。
▼かつて日本に「四大公害病」という不気味な用語があった。水俣病、第二水俣病、四日市ぜんそく、イタイイタイ病。いずれも特定の企業が所有する工場などから、有害物質を大量にふくむ汚染水やガスが排出され、それにより河川や海洋、大気の汚染を招いたことが原因である。
▼昭和中期の日本で、最大の社会問題は公害であった。とりわけ四大公害病は、地域住民に深刻な健康被害を及ぼすとともに、病気の原因が企業の人為によるものであるため法的に争う労力も必要とされた。さらには、奇病への偏見や治療法が確立されていない手探りの医療のなかで、被害者を長期にわたり多重的に苦しめるものとなった。
▼以来、半世紀が過ぎた。公害病という言葉が、日本では過去のものになったとすれば、総じて喜ばしいことではある。しかし、被害を受けた方々の法的認定などで提訴が続いているとも聞くので、慎重に申さねばならない。そうした意味で日本の公害問題は、まだ終わっていない悲劇なのである。
▼富山県に神通川という美しい川がある。悲しいことに、この川を全国的に有名にしたのも公害病であった。鉱山の未処理排水によるカドミウム汚染で、古くは大正時代から、この地域に奇病が発生した。全身の骨がもろくなり、やたら骨折をおこす。患者の激痛がそのまま恐ろしい病名となった。イタイイタイ病である。
▼カドミウムに汚染された米が、中国で流通しているという。今の中国なら、さもありなんとは思うが、やはり背筋が凍る。
関連記事
内なる不満を見つめ、愛を与える方法を通じて、心の癒しと新たな可能性を見出すヒントをご紹介します。
最新研究が脳損傷患者の意識の可能性を示し、医療や家族の対応に新たな光を当てます。
GoogleのAI「Gemini」が大学院生に不適切な発言をし、AI技術のリスクが改めて問題視された。企業の責任が問われる中、AIの安全性や倫理が注目されている。類似の事例も増え、技術の普及とリスクのバランスが課題となっている
健康な心血管を保つための食事、指圧、運動の実践方法を解説。心臓病予防のヒントが満載です!
専門医が語る乳がんリスクの主な要因と予防のポイントを解説。生活習慣の見直しで健康を守りましょう。