【紀元曙光】2020年11月2日

この人に、カタカナの肩書はつけなくてよい。

▼尾畠春夫(おばたはるお)さん。81歳。長年にわたるボランティア活動の功績により11月2日、緑綬褒章が授与された。受章についてご本人が何と言ったか、まだ筆者は報道を見ずに本稿を書いているが、おそらく「勲章なんて俺のガラじゃないよ」と照れて、取材のマイクから逃げ出すのではないか。尾畠さんの人柄からそう想像するのだが、外れてはいまい。

▼徹底した無私の人である。昭和14年、大分県国東市の生まれ。豊かさとは正反対の境遇で育ち、中学卒業後は鮮魚店で働いて生計を立てる。その中学校も、実質的には4か月ほどしか通えなかったという。ただし、そうした経済的困難は昭和の前半に珍しいことではない。つまり、尾畠さんは決して特別ではなく、当時どこにでもいたような、お金が少なくて懸命に働く日本人だったのだ。

▼自分の鮮魚店をもつ資金づくりのため、土木関係の重労働もした。そうして積んだ経験の全てが、後の尾畠さんの人生において、爆発的に役に立つことになる。

▼尾畠さんの、どういうところに学ぶべきかを考えている。一つは「体を動かすことを全く惜しまない人である」ということだ。自分の労役をゼロにしてしまうから、その対価を一切相手に求めない。被災地での食事や入浴の提供も受けず、全て自己完結でやる。人は「スーパーボランティア」と勝手に呼ぶが、当たり前のこととしか本人は思っていない。

▼もう一つ、尾畠春夫さんの大功績を挙げよう。あなたの生き方に憧れる日本人を、増やしたことですよ。尾畠さん。

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