専制体制の「中国の悪夢」がもし広がれば、世界は中共支配下の抑圧社会に似てくるだろうと専門家は指摘する。11月24日、中国北京の建設現場(GREG BAKER/AFP via Getty Images)

「中国の悪夢」が広がれば 世界は中国のようになる=専門家

元米国防総省高官の中国専門家は最新著書で、もし中国共産党による秩序が世界で実現すれば「世界は中国共産党(中共)支配下の中国のようになってしまう」と指摘した。

米シンクタンクのアメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)でアジア研究プログラムのディレクターを務めるダン・ブルメンタール(Dan Blumenthal)氏は11月17日、新刊『中国の悪夢:崩壊する国家の大いなる野望』(The China Nightmare:The Grand Ambitions of a Decaying State)を発表した。

米国防総省の中国、台湾モンゴル担当上級部長を務めたブルメンタール氏は、国内に多くの問題を抱えながらも、世界秩序の再構築しようとする中国共産党は、米国のみならず世界全体にとって大きな脅威だと述べた。同氏はこれを「中国の悪夢」と呼んでいる。

​ブルメンタール氏によれば、中共は、中国を中心とした戦略的パートナーのネットワークを作り、中共の権威主義体制に寛容的な国際秩序を確立したいと考えている。もし、​この秩序が実現すれば「世界は、中共支配下の中国のようになってしまうだろう」「社会はより圧迫され、政府の統制手段への依存度が強まり、以前よりも閉鎖的で非民主的になる」と同氏は記している。​

​ブルメンタール氏は、中共主導の経済成長を否定する。中国経済は長年、減速を続け、債務は高水準にある。また、​習近平政権は企業への統制を強め「経済発展のエンジンを壊しており、イノベーションを抑圧している」と指摘した。​

さらに、環境悪化や高齢化など社会問題に直面している。​中共は「西側イデオロギーの汚染」と呼ぶ、民主主義社会の自由、法治を極度に恐れている。このため、経済界や教育界の統制を強めている。主席​任期の廃止、腐敗の取り締まりなどで中共政権の内部にはひびが入り、習近平体制は国内からの強い圧力に直面している。

ブルメンタール氏は、体制の脆弱性が中共の野心の実現を阻んでいるが、中共は「リスクを冒すことを恐れていない」と指摘した。このような中国は米とその同盟国にとって悪夢だと分析した。



​ブルメンタール氏は、「国内問題に悩まされている中共は、挫折感と野心を持ち合わせ、そのために外に飛び出している。野心が満たされない強国は、特別の脅威になる」とした。中国が国際社会に組み入れられることで、その内部問題から派生した悪影響が世界に波及する恐れがあるという。

​新型コロナウイルスの発生はわかりやすい例だという。過度な権力集中と政治的圧力により、武漢の地方幹部は感染の流行を報告せず、感染の拡大を暴露した医師らの口を塞いだ。隠蔽された地域的な伝染病が、パンデミックに変化し、世界で数十万人の死者を出し、数億ドルの経済損失をもたらした。

​国際社会は新型コロナウイルスの世界的な流行を許した中国を強く非難した。しかし、習近平体制は圧力が大きければ、外交で強硬な姿勢に出る傾向があるという。ブルメンタール氏はアメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)主催のオンライン会議で述べた。

​「各国が感染症の対処に追われているに、中共はインドの国境で衝突を起こし、オーストラリアがウイルスの発生源に対して国際調査を求めたことに政治的圧力を強め、欧州諸国に『中国が発生源だ』という情報を削除するよう圧力をかけた。さらに、南シナ海で強硬な行動を続け、台湾を脅迫し、更に香港自治を抑圧した。新疆ウイグル人などの少数民族に対する政策を引き続き実行した」と例を挙げた。

「疫病が蔓延しても、北京は世界的な偽情報キャンペーンを続け、領土への主張を進め、インド太平洋地域に影響力のある領域を作るために近隣諸国を圧迫し続けた。中国の壮大な戦略的野望は、世界的なパンデミックの中でも休むことはない」と付け加えた。

「中国の悪夢」への対処法

ブルメンタール氏は、「中国の悪夢」に対処するための戦略は、中国を守勢に追い込むことだと分析する。「米国が中国の弱点を突き、中国に『外へ出撃するとすぐ米国の反撃に遭う』ということを理解させることだ」とし、拡張行動を抑止できると語った。

​ブルメンタール氏は、ここ数年トランプ政権が行ってきた対中強硬策を続けるべきだと考えている。報復関税といった中国の不公平な貿易慣行への反撃、中国の領土問題や侵略行為への挑戦、民主主義国に向けられた悪意ある活動の制御などが行われてきた。米国は、同盟国と協力して「民主主義戦線」を構築し、中国の挑発に対処しなければならないとした。

米国務省は11月17日、米国が中国の台頭によって現れた課題にどのように対応するかを列挙した研究報告書を発表した。​報告は、中国に存在する多くの脆弱性を分析し、新たに対中戦略を策定するための10のミッションをあげた。これらには、同盟体制の強化や民主主義と人権を促進するための新たな国際組織の創設、中国拡張行動の制御、中国問題に精通し中国と競争する次世代の官僚の育成などが含まれる。

​ブルメンタール氏は、米国のここ数年の対台政策が正しい方向に向かっていると考えている。武器売却や米台安全保障協力、高級官僚の頻繁な訪台がこの数カ月で実施された。また、台湾に対する中共の脅威が弱まるまで、米国はさらに軍事および非軍事的な安全保障アドバイザーと軍高官を、台湾に派遣すべきだと主張した。

(翻訳編集・佐渡道世)

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