【紀元曙光】2021年1月17日

26年目の、その日を迎えた。

阪神淡路大震災が起きたのは、1995年1月17日の未明。まだ寒い冬の暗闇のなかへ寝間着のままの被災者が投げ出され、あちこちで猛烈な火の手が上がった。被害の様相が全く見えない情況で、必死の救助活動が始まった。

▼その日の午前中から、被災地の、あまりにも甚大な被害が続々と伝えられた。小欄の筆者は当時、関東地方のある高校の国語教員だった。その日の授業は、とても教科書を読むどころではない。目の前にいる生徒に向かって「神戸のほうで大地震が起きた。多くの人が死んでいるらしい。もしも今、この教室に地震が起きても、君たちは絶対に死んではならない」と、ほとんど興奮するように叫んでいた。

▼この時、地元紙である『神戸新聞』も壊滅的被害を受ける。印刷設備が使えず、発行すべき新聞が印刷できない。メディアとして最大の危機に直面したが、同じ関西の『京都新聞』の協力により、大惨事の中心地にあった『神戸新聞』は、ついに一度も休刊することなく報道者の使命を見事に果たした。

▼『神戸』と『京都』の両紙は、その前年である1994年に「緊急事態発生時における新聞発行援助協定」を結んでおり、まさにそれが奏功したことになる。また日本全国の新聞社が予備機材を提供するなど、『神戸新聞』の再建に協力を惜しまなかったという。

▼筆者の心に刻まれたのは「何があっても(新聞を)出す」その心意気である。2011年の「3・11」では、模造紙に手書きで、壁新聞を作成した新聞社があったと聞く。いずれも、頼もしい話である。

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