中国各地の住民は、当局の脱貧困達成との主張を信じていない。イメージ写真(Kevin Frayer/Getty Images)

中国当局、脱貧困を全面的達成と主張 各地の市民「嘘ばかり」

中国習近平指導部は25日、北京の人民大会堂で、2020年を期限とする当局の「脱貧困」計画の達成を祝う表彰式を開催した。その一方で、中国各地の住民は、貧困地域の人々の生活が依然と厳しく、当局の「脱貧困を達成した」との主張を信じていないと語った。

習近平国家主席は表彰式で、「わが国の脱貧困攻略戦は、全面的な勝利を収めた。現行の基準の下で、農村部の9899万人の貧困層はすべて貧困から脱出した。832の貧困県と12万8000の貧困村は、(その『貧困』という)レッテルを剥がすことができた」と述べ、「人間界の奇跡だ」と自賛した。

「共産党の話は信じない」

河南省淅川県に実家のある王さん(女性)は、大紀元の取材に対して「共産党が言ったことを信じてはいけない」と語った。王さんの実家は河南省の山奥にあり、現在も生活苦が続いているという。

「私たちの村では、村民が山から出る交通費すらない。普段、野菜を作って自給自足の生活を送っていて、肉料理はほとんど口にすることがない。父は電気を使うのもためらうので、お風呂などの設備はなおさらない。もちろんインターネットも繋がっていない」

王さんの村では水道水がなく、貯水池の水を使っている。「水が溜まったら、皆バケツを使って家に運んでいく」という。

「医療費を出せないから、村の人は軽い病気なら我慢する。大病にかかったら、死を待つだけだ」

脱貧困基準に異議

中国当局の脱貧困の基準は3つある。1つ目は、年間収入が4000元(約6万4000円)。当局は「貧困から脱した人々の平均年収は、9000元(約14万4000円)以上に達した。残りの貧困層の平均年収は、6000元(約9万6000円)以上だ」としている。

2つ目は、「衣食に困っていない」。3つ目は、義務教育を受ける保障、基本的な医療保障、住宅の保障の「3つの保障」

上海市民の周さん(男性)は、「4000元の年収では、月収が300元(約4800円)余りということになる。これは脱貧困と言えないだろう」と批判した。

「上海では、毎月の食費は500元(約8000円)でも足りないくらいだ。そのほかに、毎月の交通費は少なくとも200元(約3200円)。市中心から遠く離れたボロボロのアパートですら、毎月の賃貸料が2000元(約3万2000円)以上だ」

周さんは、貧困地域に住む住民自身が、貧困から脱出したかどうかを決めるべきで、国の指導者が決めることではないと主張した。

周さんは「(官製メディアの)報道は全く見ない」と、当局の報道は嘘しかないと示した。

また、湖北省武漢市に住む呉さん(男性)は、「物価が高いため、収入基準に達しても、政府が言う『衣食に困らず』『3つの保障』が実現できない」と語った。

李克強首相は昨年5月、月収1000元(約1万6000円)の中国人は6億人いると発言した。

呉さんは、中国当局の脱貧困計画は、実際は指導者や高官らが政治的な業績を上げるためであり、「統計数値上で、貧困問題を解決しただけだ」と批判した。社会保障制度の不完全、高い税金と低い福利厚生、政治腐敗が、中国の貧富の格差を作り出した主因だと呉さんは指摘した。

時事評論家の李林一氏は、「中国当局の脱貧困はねつ造だ。多くの地域はいまだに貧困から脱出していない」と述べた。

李氏によると、中国当局は脱貧困計画を強制的に達成するために、国有企業や中央企業に対して、貧困地域の特産品などを大量に購入させた。このため、国民は当該地域の経済状況が改善され、住民の生活が改善したという錯覚を受けた。「国有企業の購入がなければ、来年はまた、貧困に戻る」

習近平指導部が脱貧困計画で「全面的に勝利を収めた」と強調する一方で、共産党と国務院(内閣に相当)は、今年の優先課題に関する指示文書(中央一号文件)において、「貧困から脱出した県について、脱貧困の日から数えて5年間の過渡期を設ける」とした。

(記者・駱亜/張玉潔、翻訳編集・張哲)

関連記事
日中戦争の勝利は中華民国の歴史的功績であるが、これは連合国の支援を受けた辛勝であった。中華民国は単独で日本に勝利したのではなく、第二次世界大戦における連合国の一員として戦ったのである。このため、ソ連は中国で大きな利益を得、中共を支援して成長させた。これが1949年の中共建国の基礎となった。
オーストラリアのピーター・ダットン国防相は22日、宇宙司令部の設立を発表し、「強硬で好戦的な中露両国」に対抗できる宇宙軍事能力が必要だと述べた。
中国メディアは、ロシアのウクライナ侵攻をめぐって、反米・反北大西洋条約機構(反NATO)などの親ロシア政権の宣伝工作(プロパガンダ)を積極的に推進している。
ロシアのウクライナ侵攻に対して世界の有力国が一致団結してロシアに壊滅的な経済制裁を加える中、米国はロシア支援を続ける中国企業への制裁も視野に入れ、中露の枢軸を断ち切ろうとしている。
欧米の経済制裁はロシアを中国共産党に接近させ、権威主義の枢軸は中国とロシアの勢力圏にある他の国々に拡大する可能性がある。