古代中国の物語

質素な宰相

春秋時代、魯の国(現在の山東省)に李文子(り・ぶんし)という宰相がいました。李文子の家は非常に裕福でしたが、当時の高官としてはめずらしくその暮らしは質素なものでした。

孟献子の子・孫仲(そんちゅう)が李文子を訪ねてきた時のことです。孫仲は「あなたは宰相の地位にあるのに、家族の着ているものは質素なもので、馬が食べているものといえば粗末な餌ではないか。皆はあなたを金にうるさいケチな人間とみるだろう。宰相がこんなことでは国家の威信に関わる」と言いました。

李文子は答えました。「もちろん家族が上等な衣を着て、馬たちが肥えるのは結構なことでしょう。しかし多くの庶民は粗末な食事をとり、古着を来て過ごしています。私は自分と庶民との間に差をつけたくないのです。それに国の威信を上げるのは、高官が着ている衣服や馬ではありません。高潔で徳のある高官こそ、国を繁栄させるのです」

孫仲(そんちゅう)からその話を聞いた孟献子は感心し、息子を厳しく叱りました。その後、孫仲は李文子にならい、家族と共に質素な服を身に着け、馬には干し草を与えるようになりました。

孫仲の話を聞いた李文子は言いました。「自分の過ちを改めることができる人はなかなかいないものです。彼は、きっと他の人たちのよい模範となるでしょう」。李文子は孫仲を上大夫という高い位に任命しました。

李文子はその後も忠実に国事に仕え、民衆のために心を尽くして働き、また家では倹約し、質素な生活を送ったそうです。魯の国の人々もこれにならい、彼の名声は末永く語り継がれました。

(明慧ネット/翻訳編集・郭丹丹)

関連記事
夜間の人工光とPM2.5による大気汚染が、子どもの甲状腺がんリスクを高めることが研究で判明。日本の都市環境も例外ではありません。
超加工食品を多く摂る人は、不眠リスクが53%も高まる?睡眠ホルモンを妨げる仕組みや栄養不足との関係、改善のために今日からできる食事の工夫を解説。
クッション性の高い靴は一見快適ですが、長時間履き続けることで足の感覚が鈍り、怪我や認知機能の低下リスクも。専門家が語る、靴選びの落とし穴と対策とは。
5月5日の「こどもの日」と中国の「端午節」は共通の歴史と五行のエネルギーに基づく行事です。自然の力を活かして、家族で健康と成長を祈る方法を学びましょう。
60万人以上のデータを分析した研究で、孤独を感じている人は認知症の発症リスクが31%高いと判明。孤独は脳に深刻な影響を及ぼします。