≪医山夜話≫ (43)
漢方の急診と太極拳
太極拳の動作は、非常に緩やかでゆっくりと見えます。しかし、それはこの空間において、肉眼で見える印象にすぎません。太極拳の修煉によってできた「功」(エネルギー団)は別の空間に存在しており、その「功」の動きはとても速いものです。この空間で手を出す前に、あちらの空間では功がすでに目標点に届いてしまいます。
鍼灸の治療効果の速さも同じ原理です。鍼灸治療は経絡とツボを利用します。経絡とツボは私たちが生活しているこの空間に存在しておらず、肉眼では見えない別の空間に存在しているのです。例えば肉眼では電流を見ることができませんが、電流が流れると確かに電球は光る、ということと同じです。
経絡やツボが存在している別の空間では、私たちがいる空間では想像することのできない程のスピードで治療効果が現れることがあります。鍼灸の治療効果の速さについて、古典には次のように記載されています。「效之信、若風之吹雲、明乎若見蒼天」(『霊枢・九鍼十二原』)。「その効果の現れは、まるで雲が風に吹き飛ばされるようで、あっという間に青い空が見える」。つまり、病気の雲は鍼灸の「風」(気の流れ)によってあっという間に吹き飛ばされてしまうのです。
(翻訳編集・陳櫻華)
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