写真は、エストニアの首都タリン(Jordan Mansfield/Getty Images)

エストニア大手紙、中国大使の新疆美化記事を掲載 直後謝罪

東欧エストニアの最大手新聞社SL Õhtulehtの編集長は、中国大使による新疆ウイグル人の人権迫害を否定する記事を掲載したことについて、公式に謝罪した。中国のプロパガンダ記事の掲載で新聞社が謝罪したのは、今年に入って今回で2度目となる。

同紙は15日、李超・駐エストニア中国大使署名の記事を広告ページで掲載した。中国政府が新疆で行っているジェノサイド(大量虐殺)、強制収容所、強制労働についての各国の主張は、新疆の実情にそぐわないデマであると反論する内容だった。

同記事は掲載後、市民から批判の声が上がった。

世論の圧力を受け、同紙編集長は同日中に、中国共産党のプロパガンダ記事の掲載は、報道の価値観に違反したとして謝罪した。

同社編集長および広告部門は問題の広告の費用開示を拒否したが、地元メディアは同社の広告価格表と照らし合わせた上で、同広告の料金は3300〜4200ユーロ(約43万~54万円)と推測している。

また、同国の大手日刊紙エースティ・パエヴァレフトも2月、李超大使の新疆に関する別のプロパガンダ記事を広告ページに掲載していた。同社広告部門の責任者はその後、掲載が不適切だと認めている。

一方、150年以上の歴史をもつエストニアの有力紙ポスティメースは、北京のプロパガンダ記事の掲載を拒否した。

同紙編集長は、中国文化を愛しているが、迫害行為を正当化するようなプロパガンダ記事を掲載しないと表明した。

エストニアの主要紙の多くは、長い歴史を持っている。ソ連がエストニアを占領したとき、当時の新聞各社は一時は旧ソ連の宣伝道具となっていた。そのため、エストニアのメディアと市民は、共産主義国家のプロパガンダの手法を熟知し、反感を抱いている。エストニアなどのバルト諸国では、中国のプロパガンダ活動への警戒感が高まっている。

エストニア新首相はかつて中国を猛批判

エストニアは、新疆、チベット、人権などの分野で中国に関心を寄せている。今年1月に首相に就任したカーヤ・カラス(Kaja Kallas)氏は昨年7月、新疆問題をめぐって中国を猛批判していた。当時、野党・改革党の党首だったカラス氏は、中国の新疆ウイグル人に対する扱いは、ナチスドイツがユダヤ人にしたのと同じだと指摘した。

カラス氏は当時、中国に対してより厳しい姿勢を取るよう同国政府に呼びかけた。同氏はさらに、中国からの投資を得るため、中国に対して一貫した立場をとることができないと欧州連合(EU)を批判した。

同氏は、「エストニアの外交は一貫性を維持すべきだ。エストニアが人権などの分野でロシアを批判するのであれば、中国に対しても同じように批判すべきだ」とした。また、中共ウイルス(新型コロナウイルス)が大流行の最中、エストニア政府が、台湾から医療物資などの支援を受けたが、中国を恐れ、台湾に対して公式に謝意を伝えなかったことも批判した。 

エストニアは中国を安全保障上の最大の脅威と見なす

近年、エストニアの安全保障当局による年次報告書の中で、中国をロシアと並ぶ国家安全保障上の脅威として位置づけている。

同国の対外諜報機関が2月に発行した年次報告書は、北京が経済的影響力、在外中国人への監視、現地の代理人などを通じて、西側への浸透と影響力を高めていることを強調した。 

エストニアの中国大使館は、同報告書の修正を要求したが、拒否された。

エストニアのメディアによれば、同国は昨年の夏、中国の外交官1人を国外追放したと報じた。中国はその後、報復としてエストニアの外交官1人を追放した。しかし、両国ともこの外交事件を公にしなかった。

北極研究の権威であるエストニア人は最近、中国に情報を提供したとして、エストニアの裁判所から3年の懲役刑を言い渡された。

(大紀元日本ウェブ編集部)

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