米韓、防衛費分担金協定に合意
専門家や政府当局の見解によると、米韓の間で第11次米韓防衛費分担金特別協定(SMA)の交渉が合意に至ったことで、インド太平洋地域で複雑性を増している脅威に対抗するため防衛同盟が強化されると考えられる。
ソウル大学校・国際学科の教授を務める辛星昊(Sheen Seong-ho)防衛アナリストは、インド太平洋軍の運営するメディア・インド太平洋防衛フォーラムに対して、「米韓両政府は2020年から2025年の6年間契約で米韓防衛費分担金特別協定に合意した」とし、「これにより同盟の基本的な基盤が安定した」と説明している。
今回の合意を「実用的かつ論理的」と評価した辛教授の説明によると、2022年以降の分担金は韓国国防費の増加率に合わせて増額される予定である。詳細は明らかにされていないが、関係当局によると韓国に駐留する在韓米軍(USFK)の経費を補う上で今回合意に至った韓国の経費負担増額は非常に有意義なものとなる。
2021年3月18日、韓国の徐旭(Suh Wook)国防部長官はアントニー・ブリンケン米国務長官とロイド・オースティン(Lloyd Austin)米国防長官と会談したが、その会談後に徐国防部長官が発表した声明に辛教授の見解が反映されている。韓国国防部(MND)の発表で、同国防部長官は「米韓のより強力な戦略通信と協力体制に基づき、米韓同盟がより発展する」と述べている。
韓国に駐留する在韓米軍は約2万8000人規模の兵力を維持している。2019年の第10次防衛費分担特別協定では、韓国側の負担を年間約924億円(約9億2400万米ドル)とすることで交渉が成立していた。今回合意に至った協定では韓国の年間負担額の増額が見込まれている。
交渉が合意に至ったことで、今後数か月の間に米韓はさまざまな防衛課題について協議を進めることになる。辛教授の説明によると、これには米軍から韓国軍司令官への戦時作戦統制権(OPCON)の移行、北朝鮮によりもたらされる脅威の防御と抑止、インド太平洋水路の防衛、日米韓3か国の安保協力などが含まれる。
辛教授はまた、戦時作戦統制権の移行については2006年初頭から協議が行われてきたが、首都ソウルの龍山基地に置かれていた在韓米軍司令部を首都の南方約65キロの地点に所在するハンフリーズ基地に移転することに米韓が合意したことでその勢いが加速されたと説明している。
辛教授の見解によると、在韓米軍司令部の移転は自主防衛に対する韓国軍の責任が拡大されたことを示すものである。
米国当局は永続的に韓国の保護に取り組む構えがあることを強調している。ワシントン・ポスト紙の報道では、米国国防総省の報道官を務めるマーティン・マイナース(Martin Meiners)陸軍中佐は、「米韓相互防衛条約に準拠して米国は確固たる姿勢で韓国の安保を保護し、特に在韓米軍は必要とあらば今すぐにでも戦闘を開始できる準備が整っている」と述べている。
特にミサイル防衛の面では日本を加えた3か国間の防衛協力体制が今後重要になると述べた辛教授は、在韓米軍の存在を「おそらくインド太平洋地域の安定を維持する上で最も重要な柱」と表現している。同教授はまた、特に東シナ海と南シナ海が顕著あるが同地域全域で紛争の火種が燻っていることから、地域全体の平和を維持する上で朝鮮半島の安定性が非常に重要になると話している。
韓国経済が貿易に大きく依存しているだけでなく韓国は世界第2位の造船国であり、同国は航行の自由を強く支持していると説明した同教授は、「軍事安保という観点だけでなく、経済安保の面からも韓国にとっては航行の自由と法治を維持することが重要となる」と述べている。
(Indo-Pacific Defence Forum)