中国共産党の新植民地主義 ブータン国境に集落や前哨基地を建設

中国は近隣諸国の土地を(多くの場合違法に)押収し、強制的な戦術を用いることで、継続的に自国領土の拡大を図っている。このいわゆる「土地収奪」により、中国は管理できる資源の増加を図っている。これだけにとどまらず、中国共産主義政権は土地収奪を戦略的な経済的・軍事的優位性を獲得するための手段としても利用している。

特に南アジアと東南アジアにおいて、中国は領土の収奪により地政学的利益を得るという攻撃パターンを繰り返してきた。

最も酷い例として、最近のブータンの状況が挙げられる。2021年5月にフォーリン・ポリシー(Foreign Policy)誌のウェブサイトに掲載されたロバート・バーネット(Robert Barnett)研究員の記事によると、中国は戦略的優位性を得るために過去5年間にわたりブータンとの国境地域に一連の建物、道路、軍事前哨基地を建設してきた。

中国は効率よく他国領土内に集落を建設することに成功し、これは「過去に中国が国境地帯に適用してきた戦略よりも一層挑発的な行動である」と、バーネット研究員は記している。

同研究員は続けて、この集落建設は中国共産党中央委員会総書記を兼任する習近平主席による「チベット国境地帯の強化計画の一環であり、ヒマラヤで国境を接するインドや近隣諸国を策略で負かすことを目指す中国の長期的な取り組みが劇的に増長した結果」であると述べている。

同記事には、植民化とも呼べるブータンでの活動が明らかになったことで、国際社会における中国の主張と意図に懐疑心が深まっていると指摘。また、他国領土に対する中国の野心に絡む緊張も高まっていると記されている。

新植民地主義とも受け取れる中国の行動により国際社会の不安はすでに頂点に達している。2019年6月、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、中国共産党がタジキスタン軍の能力は国防に不十分と見なしたことから、代わりに中国人民解放軍がアフガニスタンとタジキスタンの国境に駐留施設を建設して、かなりの範囲を警備していると伝えた。

某タジキスタン当局者は報道機関に対して、「自国の一部では、中国人民解放軍が完全に国境管理を担っている」とし、「中国軍は自国軍隊の車両を用いて独自に警備活動を行っている」と話している。 ザ・テレグラフ紙が伝えたところでは、2020年11月に中国が150ヘクタールのネパール領土を収奪するなどの攻撃な活動を展開したとして、ネパールの政治家等が非難の声を上げた。

同紙はまた、2020年5月に中国共産党が中国人民解放軍をネパールの辺境5地域に派遣して軍事基地の建設を開始している様相が衛星画像に捉えられたと報じている。

ネパール会議派(NC)のジヴァン・バハドゥール・シャヒィ(Jivan Bahadur Shahi)議員はザ・テレグラフ紙に対して、「ネパールのような小国の60倍の国土を有する中国がなぜネパールの領土を奪う必要があるのか?」と問いかけている。

ネパールと国境を接するインドのウッタル・プラデーシュ州に拠点を置く独立系のラトネシュ・ドウィヴェディ(Ratnesh Dwivedi)政治アナリストは、「最終的な中国の目的はネパールではなくインドである」とし、「中国はネパールという緩衝国を通してインドに影響を与えようとしている」と説明している。

中国はまた、インドでも土地収奪戦術を展開している。複数の報道によると、2020年9月にインドのラジナート・シン(Rajnath Singh)国防相は、中国が「ラダック地方に含まれる約3万8000平方キロの土地を違法に占有している」と議会で表明した。

2020年6月以来、国境に当たる同地方では中印国境紛争による緊張が高まっている。

一部の専門家等の見解では、中国は現状を変えて巧妙に領土略奪を実行するために、中印紛争の火種となっている3,500キロの中印国境の画定について正式に合意することを意図的に避けている感がある。

最近では、中国のインドに対する土地収奪により、カシミールのパキスタン実効支配地域に直接繋がる道路建設が可能となった。これにより、特に「中国・パキスタン経済回廊(中パ経済回廊、CPEC)」と組み合わせることで、中国はアジア大陸の貿易独占目標に向けてまた一歩大きく前進したことになると、専門家等は説明している。

ニューデリーに本拠を置くオブザーバー研究財団(ORF)のハーシュ・パント(Harsh Pant)戦略アナリストの説明によると、中国は「同国が従来から使用してきたサラミ法」により、最終的に重要な道路・航路や地域一帯を掌握するまで、徐々に、系統的に土地に狙いを付けているという。

南シナ海においては、中国は主要交易路の支配権を獲得するために人工島を徐々に建設して軍事化を図ってきた。これほど、用地取得戦術を甚だしく展開した場所はない。2013年以来、ブルネイ、マレーシア、フィリピン、台湾、ベトナムなどの他諸国が領有権を主張する海域とその資源の権利を訴えてきた中国は、同海域に多数の滑走路やミサイルを装備した7つの軍事基地を建設した。

南シナ海の海域に対する中国の主張については、2016年に常設仲裁裁判所が国連海洋法条約(海洋法に関する国際連合条約/UNCLOS)に基づきその主張を却下されている。特にフィリピン領海における中国の活動の多くは違法行為に当たる。

5月上旬にフィリピン排他的経済水域に含まれる紛争海域の環礁付近で中国海警局がフィリピン船に対して迷惑行為を働いたとして、フィリピン政府が抗議を申し立てている。

 エコノミスト誌の記事には、「新たな港湾や補給施設を建設したことで、中国はこれまで以上に有利に計画を推進できるようになった。中国の地質調査船は紛争海域で石油とガスを探索している」とした。

「しかし、すべてが中国の思惑通りに進んでいるわけではない。噂によると厳しい気象条件により中国が建設した人工島のコンクリートは崩れ、その基盤はスポンジ状になっている。もしスーパー台風が直撃でもしたらどうなるか分からない」と記されている。

国連海洋法条約に則った常設仲裁裁判所の判定を支持する米国は、南シナ海の大部分の沖合資源に対する権利を主張する中国の言動は違法であると繰り返し訴えている。2021年1月、アントニー・ブリンケン(Antony Blinken)米国務長官は、米国は中国の圧力に抵抗する東南アジア諸国を支持すると表明している。

公海を航行する米国と他諸国の法的権利を保護することを目的として、米国とその同盟諸国は南シナ海で継続的に「航行の自由作戦(FONOP)」を展開している。 

(Indo-Pacific Defence Forum)

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