中国の著名な人権弁護士である唐吉田氏(Getty Images)

「日本にいる重病の娘に会いたい」中国人権弁護士の求め 学者らが人道支援

中国の人権活動家で元弁護士の唐吉田氏が、重病を患う日本に留学中の娘(25)を見舞うために出国を何度も試みているが、中国当局に阻止されている。日本を含む海外の有識者は、唐氏の出国が早急に実現するよう、署名運動や公開書簡などを行なっている。

唐氏の中国SNSにおける書きこみによると、2年前から日本に滞在している娘は、今年4月に肺結核を患い東京都内の病院に入院していた。ところが5月、結核菌が髄膜まで到達したため水頭症を発症。以来、意識不明の状態が1か月を過ぎた現在も続いており、集中治療室で治療が行われている。

東京大学教授で中国社会問題に詳しい阿古智子教授は、唐氏と娘の人道支援に協力している。教授はこのほど、オンラインの署名サイト「Change.org」で、唐氏の出国を早急に許可するよう中国政府に求めるページを作成した。

大紀元の取材に答えた阿古教授は、中国の弱者支援運動を調べるなかで、唐氏と知りあったという。唐氏は中国本土で、土地の強制収用の被害者、弾圧を受けている法輪功学習者、毒粉ミルクの被害者などの弁護を引き受けていた。中国共産党当局は2010年、人々に法的支援を行った唐氏の弁護士資格を剥奪した。10年以上にわたり、北京国家安全局は「国家安全のリスク」を理由に、唐氏に対して出国を許可していない。

阿古教授は、日本に留学した唐氏の娘を食事に招き、進学相談にのるなど親身に接していたという。唐氏の娘はアルバイトしながら語学学校に通い、大学受験に備えていた。そんな唐氏の娘について、阿古教授は「『中国の農村ではまだ機会に恵まれない女の子が多い。心理学を学んで力になりたい』と話す優しい人」だと、署名用のページで紹介している。

阿古教授は、中国SNSに作られた唐氏の娘の支援を呼びかけるオンラインのグループにも、娘の容体や、治療に当たる日本の医師からの説明などを中国語で伝えている。また、唐氏が希望する訪日には緊急性が極めて高いことも、日本の外務省に強く伝えたという。「命に関わることで、自分も子どもがこうなったらと想像すると、放っておけない」と、その想いを語った。

ウイルスの流行により、現在、日本と中国を結ぶほとんどの旅客便の路線は停止している。しかし日本政府は、この案件の緊急性を認め、唐氏に対して家族訪問ビザを発給した。6月2日、唐氏は福建省福州の空港から出国を試みたが、空港で中国当局者によって阻まれ、出国できなかった。唐氏の航空チケットは、破り捨てられたという。

当局による弾圧の延長に「出国禁止」

中国共産党当局は「政権の安定を脅かす可能性がある」とみなす人々を、さまざまな口実をつけて出国を阻止したり禁止したりしている。今年1月28日、中国の著名な人権活動家である郭飛雄氏は、ガンを患う在米の妻の看病のために上海浦東空港から米国行きの飛行機に乗ろうとしたが、当局の言う「国家安全上のリスク」の理由で止められ、出国できなかった。

中国の人権弁護士は、共産党による弾圧の対象になることも多い。2015年7月9日以降、23省で数百人の人権弁護士らが逮捕、拘禁、召喚、事情聴取された。その後、懲役刑、弁護士資格の剥奪、偽りの自白、出国禁止リスト登録などの措置が取られた。この弾圧は「709弁護士逮捕」と呼ばれ、日本を含む世界各国でも報道された。

海外の有識者 唐氏の出国許可を求める公開書簡

海外の有識者は5月23日、公開書簡を作成して、唐氏が出国する権利の正当性および必要性を訴えた。同書簡には、ニューヨーク大学法学部教授のジェローム・コーエン氏、シカゴ大学客員教授の滕彪氏、台湾の中央研究院法学研究所の陳玉枝氏など学者や弁護士など100人以上が署名している。

同書簡は、中国共産党政府に向けて「人道主義と人権上の義務の尊重に基づき、唐氏が娘を見舞うため出国を許可するように」と呼びかけている。

書簡の文書は、世界人権宣言第13条2項「すべての人は、自国を含むいかなる国からも出国し、自国に戻る権利を持つ」を引用して、唐氏の出国が許可されないことの不当性を指摘した。また、中国当局の主張する、唐氏の出国に関する「国家安全上のリスク」が具体的に何を指すのかは説明がないとして、その不透明性を非難した。

唐氏は中国SNSなどで、支援する国内外の協力者に謝意を表明するとともに、父親である自身の唯一の希望は、日本で必死に病と闘う娘を見舞うために、当局が出国を認めてくれることだと書きこんでいる。

(佐渡道世)

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