中国、「反外国制裁法」を可決 専門家は「実力を過信」と効果疑問視
中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員会は10日、米国などの対中制裁措置に対抗して、「反外国制裁法」を迅速に可決した。中国に進出する外資系企業は、同法の可決は透明性に欠けると批判した。
全人代は今年4月に「反外国制裁法」草案を審議し始めたばかりだ。中国政府系メディアによると、今月7日に第二読会が行われた。10日、第三読会を省き可決した。
ここ数カ月、米国と欧州連合(EU)などの各国は、新疆ウイグル自治区の人権侵害問題や香港民主化運動の鎮圧をめぐって、中国と香港当局者に対して制裁措置を科した。
中国当局は「反外国制裁法」を通じて、各国に反撃し復讐する狙いがあるとみられる。
米ホフストラ大学法学部のジュリアン・ク(Julian Ku)教授はツイッター上で、「反外国制裁法」について分析した。
ク教授は、中国当局が同法の下で、「(制裁を発動した)外国の政府当局者とその家族、外国政府の制裁に助言したシンクタンク、NGO団体などへの制裁プロセスを正式なものとする目的がある」「もう一つの狙いは、中国に進出する企業に対して、米国やEUの制裁措置の遵守を禁じることにある。企業が米国などの制裁に従った場合、中国で提訴され民事訴訟になる。例えば、新疆生産建設兵団(XPCC)が外資衣料品メーカーH&Mを訴えることができる」と示した。
米政府は昨年8月、深刻な人権侵害に関わったとして、XPCCなどに制裁を発動した。
ク教授は、中国の反外国制裁法は「基本的にEUのブロッキング法(Blocking Statute)をまねたものだ」と指摘した。ブロッキング法は、米国の制裁措置(対イランなど)の影響を無効にすることを目的にしている。
教授によると、中国の反外国制裁法には、EUのブロッキング法と同様に、必要に迫られた企業は米国の制裁の遵守を認める規定がある。この規定は、外資企業だけでなく、中国企業にとっても「大きな抜け道」になる可能性があるという。
ロイター通信によると、中国EU商会は、同法案の可決について透明性の欠如にメンバー企業が警戒していると示した。同商会のイェルク・ウットケ(Joerg Wuttke)会長は、「中国は急いでいるように見える。このような行動は外国投資を呼び込めないだけでなく、政治的な対立の犠牲者と感じている外国企業を安心させるのに役立たない」と述べた。
いっぽう、豪シドニー工科大学准教授の馮崇義氏は米ラジオ・フリー・アジアの取材で、「中国は自身の実力をいつも過信している」と制裁の効果を疑問視した。豪州やEUの経済が中国に大きく依存していると誤判断し、制裁を発動したが「ほとんど効果がなかった」という。
中国当局は中共ウイルス(新型コロナウイルス)の起源調査を求めるオーストラリアに報復するため、豪州産のワインやロブスター、石炭、牛肉、乳製品などを輸入制限の対象に指定した。豪政府は輸出先の多様化で、今年の輸出規模が昨年より42億ドル増加する見通しだ。
新疆ウイグルの人権問題で中国当局はEUの議員やシンクタンクなどに制裁措置を発動したが、EUは7年間の交渉を経てようやく合意したEUと中国の包括的投資協定の批准手続きを中止した。
(翻訳編集・張哲)