ILOとユニセフは4年ごとに世界の児童労働の実態を報告にまとめている。児童労働に従事している子どもの数は2016年までには1億5200万人に減少していたが、10日に公表された最新報告によると、2020年はこの減少傾向が一転した。写真は2013年12月、カンボジア・コンポンチャム州で岩を運ぶ少女(2021年 ロイター/Samrang Pring)

アングル:世界の児童労働が20年ぶりに増加、コロナ禍で悪化も

[アディスアベバ 10日 トムソン・ロイター財団] – 新型コロナウイルスの感染拡大で世界経済が打撃を受ける中、心身の成長を阻害する危険な「児童労働」に従事している子どもたちの数は20年ぶりに増加に転じ、およそ1億6000万人に達したことが、国際労働機関(ILO)と国連児童基金(ユニセフ)の共同報告でわかった。緊急な対策を講じなければ、その数は来年末までに2億人を突破するリスクがある、と同報告は警告している。

ILOとユニセフは4年ごとに世界の児童労働の実態を報告にまとめている。児童労働に従事している子どもの数は2000年に2億4600万人に達したが、2016年までには1億5200万人に減少していた。しかし、10日に公表された最新報告によると、2020年はこの減少傾向が一転、特に人口増加や貧困が広がっているアフリカが最大の増加率を示した。

ユニセフのフォア事務局長は、6月12日の「児童労働反対世界デー」に向けた声明で、「児童労働との闘いにおいて、われわれは後退している。過去1年で情勢は改善してはいない」と指摘。「(感染拡大抑制のための)世界規模のロックダウン(都市封鎖)が2年目となり、学校閉鎖、経済活動の停止、国家予算の縮小により、家庭は(子どもを児童労働に従事させるという)悲痛な選択を余儀なくされている」と語った。

国連は、2021年を児童労働撤廃国際年に指定、2025年までに児童労働を撲滅する目標を掲げている。しかし、コロナ禍による経済への打撃や学校閉鎖のため、児童労働の時間が長くなるなど状況が悪化している可能性があると指摘。さらに多くの子どもが最悪の児童労働に追い込まれる恐れがあると懸念を示している。

各国政府が財政緊縮策を導入したり、十分な弱者救済を怠った場合、児童労働を強いられている子どもたちの数は、2022年末までに2億0600万人に増加するだろうと国連では予想する。

ILOとユニセフの報告がとりわけ強く警告しているのは、世界の子どもの半分強を占める5─11歳で児童労働が増加し、さらに健康と安全を脅かす危険労働に従事する子どもの数が増えている点だ。

報告執筆者の1人でユニセフの上級顧問であるクラウディア・カッパ氏は、ジュネーブから行なったトムソン・ロイター財団とのビデオ通話で、「この現象はコロナ禍前から見られた。コロナ禍の影響を考えると、新たな懸念材料が生じてくる」と述べた。

一方、同氏は世界規模で保育手当支給などの改善策が講じられ、雇用最低年齢まで無償かつ高品質の教育が保障されれば、児童労働の数は1500万人の削減が可能だろうとの予想も示した。

ILOのガイ・ライダー事務局長は、農村部の開発投資拡大と、児童労働の70%を占める農業部門における労働適正化も重要と指摘。「最新の見通しはわれわれに警鐘を鳴らしている。新しい世代の子どもたちが危険にさらされるのを傍観するわけにはいかない」と述べた。

さらに、「われわれは重大な局面にいる。多くはわれわれの対応にかかっている。新たなコミットメントと注力によって現状を脱し、貧困と児童労働のサイクルを断ち切る時だ」と述べた。

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