【歌の手帳】十五の心
不来方(こずかた)のお城の草に寝ころびて空に吸われし十五の心(一握の砂)
文学者(研究者ではなく、文学を創作する人)というのは、どうも普通の人間ではなく、多少なりとも「奇」であったり「狂」であったりするものです。
石川啄木(1886~1912)という短命の歌人は、その歌が秀逸であるのとは対照的に、生活者としては全く無能で、友人から借金しまくって生きていた、どうしようもない人間でした。
自分が「人生の落伍者」であるという自覚は、皮肉なことに第一歌集『一握の砂』に見られる珠玉の作品になりました。「はたらけど」のリフレインなどは、まさにそれでしょう。
そんな啄木にも、盛岡城の草に寝ころび空に溶け込んだ15歳の頃があったという、甘美な追憶の歌です。
(聡)
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