ウルズラ・フォン・ デア・ライエン欧州委員会委員長(Getty Images)

中国の対EU投資、10年ぶりの低水準 要因はパンデミックのみならず「政治関係の悪化」も=報告

中国からEU27加盟国および英国への投資は、2020年に10年ぶりの低水準に落ち込んだ。専門家の分析によると、要因は「政治的な関係の悪化」で、今後も減少傾向が続くとみている。調査会社ロジウム・グループとドイツのシンクタンク「メルカトル中国研究所(MERICS)」の報告で明らかになった。

両組織による共同報告書「Chinese FDI in Europe: 2020 Update(欧州における中国の海外直接投資、2020年更新版)」によると、中国から欧州への海外直接投資(FDI)は、2019年の139億ドルから77億ドルに減少し、10年ぶりの低水準となった。

中共ウイルス(新型コロナウイルス)による渡航規制や、中国国内の経済状況も要因だが、「パンデミックが唯一の原因ではない」と報告書は指摘する。投資の低下は、欧州諸国の人々にとって中国からEUに対する「報復的な制裁措置」は受け入れ難いとの拒否感が強まっていること、また、中国当局の海外投資規制や、EUのFDI審査の強化なども理由に並べた。

EUは3月、ウイグルのイスラム教徒に対する人権侵害に関与したとみられる4人の中国政府関係者に制裁を科した。その数日後、中国共産党政権は英国側の個人9人と4団体への報復制裁を発表した。

また、紛争中の南シナ海や台湾をめぐるEUの関心の高まりも、西側諸国と中国の政治的緊張を高める要因となっている。

報告書は、中国による対米投資が激減したのは「FDI審査ではなく、政治的な関係の悪化によるもの」と分析している。この前例から、中国による対EUや英国投資も同様に減少に傾くと見ている。

ウルズラ・フォン・ デア・ライエン欧州委員会委員長は15日、EUと中国を隔てる主な問題は人権問題であり、中国はEUにとって「ライバル」であり、「経済的に強力な競争相手」だと述べた。

報告によると、中国の対EU総投資額の50%以上はインフラ、ICT、電子装置が上位3分野を占める。ライエン委員長によれば、EUは最先端技術を確保して国家安全保障上の脅威に取り組み、投資審査のプロセスを強化している。「機密分野の取引は審査され、ブロックされる可能性が高くなる」と語った。

また、中国企業による買収やM&Aは、2016年以降、毎年減少している。2020年には13年ぶりの低水準に縮小し、同年までに完了した案件の総額でみれば、前年比45%減の約400億ドルとなったことがわかった。

(RITA LI/翻訳・大紀元日本)

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