香港警察は、警察官を刺した後に自殺した男性を追悼しないよう市民に警告した。2021年7月2日、事件の現場では、警察は白い花を持つ人々を止めてチェックしている(ANTHONY WALLACE/AFP via Getty Images)

香港警官襲撃事件 男性の勤務会社が本土からバッシング 一転謝罪

1日夜、香港の警察官を刺した後に自殺した香港人男性は、豆乳メーカー「維他奶(Vitasoy、ビタソイ)」社の幹部だったことが報じられた。同社は同氏を追悼するコメントを出したが、中国本土のSNSユーザーが「テロリストを支援している」と同社へのボイコットを呼びかけたため、一転謝罪に追い込まれた。

香港が英国から中国に返還されて24周年に当たる1日、香港の繁華街コーズウェイベイ(銅鑼湾)の路上で、男が28歳の警察官を刺した後、自殺を図り死亡した。襲われた警察官は治療を受け、現在容態は安定している。

香港警察はこれまで死者の個人情報を公表していない。香港メディアによると、死者はビタソイ社の香港調達部門の責任者・梁健輝氏(50)だった。

複数の知人が実名でネット上で、死者は「普段は温厚で勤勉な人。決してサイコパスや過激派ではない」と証言している。

報道によると、死者が携帯していたUSBカードに残された遺書には、「香港国家安全維持法」が市民の表現の自由を奪っていると批判する内容があった。

昨年6月、中国中央政府は香港での反政府的な動きを取り締まるため、「香港国家安全維持法」を導入した。​違反者は最高で無期懲役が科される。同法をめぐっては、香港の自由を奪ったとして国際社会から非難されている。

事件当日の夜、香港政府は犯行を「テロ攻撃 」と認定した。キャリー・ラム行政長官は、事件を強く非難し、警察が徹底的な調査を行うと述べた。

しかし、多くの香港市民はネット上で死者を「勇者」「烈士」「兄弟(大切な仲間)」などと呼び、哀悼の意を表していた。2日、事件現場では、警察が厳重に警備し、白い花を持つ市民を止めて調べていた。

死者の勤務先だったビタソイ社は2日、死者の遺族に哀悼の意を表す社内通知を発表した。発表直後、中国本土のソーシャルメディアでは、ビタソイ社が「テロリストを支援している」と非難し、ボイコット運動を呼びかける投稿が相次いだ。その後、同社のイメージキャラクターを務める芸能人2人は、所属事務所を通じて、同社とのCM契約を解除したと発表した。

3日未明、ビタソイ社は中国のSNS微博(Weibo)の公式アカウントで声明を発表し、「私たちは、香港政府が香港国家安全維持法に基づいて事件を調査することを全面的に支持する」と述べた。3日正午、ビタソイ社は別の声明を発表し、2日に出した社内通知は、従業員が「個人の判断」で出したものであり、「公式な承認を得ていない」とした。

米政府系放送局ラジオ・フリー・アジア(RFA)は2日夜、YouTubeで梁氏をどう評価するかの投票を行なった。2時間弱で集まった2000票のうち、79%が「烈士」を選び、「暗殺者」「孤狼(攻擊性のある人)」「テロリスト」がそれぞれ約3%、「わからない(歴史が決める)」が約13%だった。

米国在住の時事評論家である唐靖遠氏は3日、自身の動画チャンネル「遠見快評」で、「今回の事件は、中国共産党の驚異的な破壊力を再び浮き彫りにした。中国共産党による一党支配という権威主義体制は、行く先々で人々の道徳観を破壊し、人々を、悪の追随者か抵抗者のどちらかになることを強要している」と指摘した。

中国の専門家である豪シドニー工科大学の馮崇義教授は大紀元に対し、香港エリート層の長期的な抵抗を維持するためには、非暴力・非協力運動がより適切で持続可能な方法であるとし、「香港の希望は失われておらず、香港人は国際社会との結びつきを強め、国際連合と協力して中国共産党に立ち向かうべきである」と述べた。

(翻訳編集・王君宜)

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