【歌の手帳】真間の手児名
葛飾(かづしか)の真間(まま)の手児名(てこな)がありしかば真間の磯辺(おすひ)に波もとどろに(万葉集)
歌意「あの葛飾の真間の手児名が今も生きていたら、この真間の海辺の磯に波がとどろくほど、騒ぎ立てられていただろうに」。
東京都の東端に葛飾区(かつしかく)という区がありますが、万葉の時代は、このあたりまで海の入江が深くはいり込んでいました。真間とは、崖のような傾斜地を意味する古語です。
手児名(手児奈)という、まことに美しい娘がいました。嫁いだ先と実家との間が不仲になったため、手児名は幼児をつれて実家へ戻ります。そんな手児名に求婚するため、男たちが殺到しました。傷心の手児名は、ついに海に入水して死にます。
美しくも悲しい、万葉の伝説です。
(聡)
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