【歌の手帳】閑古鳥
歌意「この浮世を憂うる私を、その鳴き声で、一層寂しがらせておくれ。閑古鳥よ」。
松尾芭蕉の句です。出典である『嵯峨日記』には、西行の世界に憧れ、閑寂を求めてやまない芭蕉の心情が表れています。
元禄4年(1691)初夏。芭蕉の門人・向井去来が、自身の別荘である京都の落柿舎(らくししゃ)に師の芭蕉を招きます。その16日間の日記が『嵯峨日記』になるのですが、実際には、俳諧の宗匠である芭蕉の来京を聞いた訪問客が多く、閑寂とはいかなかったようです。
閑古鳥(かんこどり)はカッコウのこと。文学のなかでこそ、その名は詩情を帯びるのですが、今では「コロナ禍でお客が来ない。閑古鳥が鳴く」の誤用ばかり。悲しい限りです。
(聡)
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