「人災だ」鄭州市の水害に非難轟々 ダム放流も事前告知せず
「これは人災だ」。河南省の省都・鄭州市で起きた大規模な水害の発生から2日経った今、被害の全容が徐々に明らかになってきた。SNSを中心に政府の対応を批判する声が高まっている。地元政府が事前告知せずにダムの放流を行ったことが今回の大惨事につながったとの見方が強まっている。
地元気象当局は、今回の記録的な大雨を「千年に一度」の大雨と表現している。20日夕方から水位が急速に高まり、地下鉄5号線の海灘寺駅から沙口路駅までの複数のトンネルが浸水した。
水があふれている車内で撮影した1人の乗客はソーシャルメディアに投稿し、「水が腰まで上がってきている。この動画を見た皆さんに、通報していただくようお願いしたい。私たちは沙口路駅近くの地下鉄5号線の車内にいる」と訴えた。これは、同乗客が投稿した最後の動画とみられる。当時、消防も救急も市長ホットラインの電話も通じなかった。
別の乗客は動画の中で、「水の流れが速いから、電車内から脱出しても、水に流されるだけだ」と話した。さらに、他の乗客の投稿では、地下鉄駅のホームに若い女性の遺体が5、6体並べられていた。洪水が完全に引いていない市内の道路でも、複数の遺体が横たわっていた。
地元当局が21日未明に公表した情報では、市民12人が死亡、5人が負傷した。同日夕方、当局は死亡者数を25人と訂正し、行方不明者は7人とした。
いっぽう、市中心部までの直線距離がわずか6キロの常荘ダムが20日午前10時30分、放流を始めた。市防災当局がこれを公表したのは14時間後の翌日深夜1時だった。当局は放流の理由を「ダムが厳しい状況にあるため」とした。
女性市民の王さんは21日、米ラジオ・フリー・アジア(RFA)に対して、「市政府は放流する前、市民に避難指示を出さなかったし、地下鉄も普通に運行していた。これが原因で多くの人が亡くなった」と述べ、これは天災ではなく人災だとした。王さんによると、20日午後5~6時の間、市内の道路で急に増水した。
「もし、連日の大雨で洪水になったなら、水は急に増えるのではなく、少しずつ増えていたはずだ。1時間以内に突然増水したとは考えにくい」
RFAは市民が撮影した当時の動画を公開した。それによると、20日13時40分、雨足が強く道路に少し水が溜まっているように見えるが、バスなどは通常通り運行している。しかし、40分後の14時20分になると、道路全体が冠水し、一部のバスは立ち往生している。1時間後の15時20分には市中心部の道路はすでに海と化している。17時30分に水の流れが激しくなり、市全体は水没し、車や市民が流されている。
今回深刻な被害を受けたのは地下鉄5号線。防災当局が20日午後8時に発表した情報は、地下鉄5号線の電車は午後6時に海灘寺駅~沙口路駅間のトンネルで停車した。しかし、乗客が閉じ込められたことや死亡者が出たことに触れなかった。その約2時間後、防災当局は再び情報を更新し、地下鉄に閉じ込められた乗客1人を救出したとした。この乗客は、地元交通ラジオ放送の記者で、閉じ込められていた間に絶えずSNS上で投稿したという。
鄭州市に住む時事評論家の唐氏は、「市政府の高官は、上層部に責任を追及され、失脚することを恐れている。だから、死亡者数などを隠して、被災状況を隠ぺいしようとしている」と指摘した。
河南省水利庁は21日未明、今回河南省を襲った豪雨は「五千年に一度」の大雨だとした。
(翻訳編集・張哲)