【歌の手帳】夢のあと
夏草や兵(つはもの)どもが夢のあと(奥の細道)
歌意「夏草が生い繁る、この奥州の地へ来ている。ああ、ここで往時の武者たちが激しい戦いを繰り広げたことも、もはや夢の跡のようだなあ」。
松尾芭蕉が『奥の細道』の旅で、平泉の高館(たかだち)に至ったのは旧暦5月中旬でした。
兄・頼朝の追撃を受けた源義経が、最後の戦いを見せた後、壮絶な自刃を遂げたその場所に立つ芭蕉。杜甫「春望」の名句「国破山河在、城春草木深」を引いて、「国破れて山河在り、城春にして草青みたり」と詠じます。
この有名な一節の後に続く芭蕉の姿が、私は大好きです。「笠うち敷きて時のうつるまで泪(なみだ)を落し侍りぬ」。
芭蕉は懐古の人です。杜甫とも、義経とも、芭蕉は直に対話できるのでしょう。
(聡)
(読者の皆様へ)下のコメント欄へ、ご自作の「短歌」「俳句」をお寄せください。歌にまつわるお話も、ぜひお書き添えください。皆様とともに作り上げる、楽しいコーナーにしたいと願っております。なお、狂歌や川柳は、また別の機会とさせていただきます。お待ちしております!
関連記事

「フクロウとキリギリス」の物語で学ぶ、甘い言葉やお世辞が真の賞賛とは言えないという教訓。イソップ寓話の魅力とともに、道徳的な価値を感じてみましょう。

清明の季節は「肝」の働きが高まり不調も出やすくなります。今が旬の菜の花は、肝の熱を冷まし気の巡りを整える優れた食材。簡単に取り入れられる養生レシピとともに、春の五行養生をご紹介します。

年齢とともに増える抜け毛や白髪。実は日々の食事で改善の余地があります。髪に必要な7つの栄養素と、中医学が教える髪と内臓の深い関係について解説します。

長年うつ病に苦しんだ女性が、薬ではなく「精神修養」によって回復。絶望の中で見つけた“希望”が、人生を根底から変えた──その実例と、科学的裏付けとは。

中医学では、緑内障の原因を「怒りや憂うつ」「代謝機能の低下」「夜更かしによる精の消耗」など全身の気血の乱れとして捉え、漢方や鍼、体操で改善を図ります。