7月26日、東京五輪が開会した。しかし直近の世論調査でも内閣支持率の下落に歯止めがかかっていない。写真は14日、都内でIOCのバッハ会長と会談する菅首相。代表撮影(2021年 ロイター)

アングル:五輪開催でも支持率浮揚せず、与党内に早期総裁選待望論

[東京 26日 ロイター] – 東京五輪が開会した。しかし直近の世論調査でも内閣支持率の下落に歯止めがかかっていない。与党幹部や専門家からは新型コロナワクチン接種をめぐるトラブルが響いており、五輪開催による支持率押し上げ効果は少ないとの指摘が出始めている。与党内では衆院選前に総裁選を実施したいとする声も少数だが出始めている。

<メダルは首相の功績ではない>

日本経済新聞とテレビ東京が23─25日に実施した世論調査によると、内閣支持率は34%と前回6月調査から9ポイント下落、菅政権発足後最低となった。不支持率も7ポイント上昇し、57%だった。

菅政権はこれまで、ワクチン接種の加速や、五輪での日本人選手の活躍を受けた支持率回復をテコに、パラリンピック後の9月にも衆院解散に踏み切り、一定の成果を得て菅義偉首相が総裁選で無投票で再選されるとのシナリオを描いていた。しかし少なくとも現時点では、五輪開催が支持率反転に結び付いてはいない。24日以降は、日本選手によるメダル獲得も相次いでいるが、内閣支持率との関連は低いとの見方もある。

ある与党幹部は26日、「国民に大切なのはワクチン。ワクチンの混乱があるかぎり支持率は上昇しない」と語った。国内政治とメディア論に詳しい立教大学の砂川浩慶教授も「選手が頑張ってメダルを取ることは菅首相の功績ではないということ。ワクチンをめぐるごたごたが支持率を大きく下げている」と指摘する。

国内各地の接種現場でワクチン不足が発生しているが、政府側は4000万回分のワクチンが在庫として滞留していると主張。在庫はないとする多くの自治体側の主張と対立している。その中で菅首相は23日、10月以降に供給されるワクチンの前倒し供給を、米ファイザー社のブーラ最高経営責任者(CEO)に要請したと報じられている。

<祝福の電話にも批判>

与党内には一時、国内で反対意見もある五輪について、開会すれば日本人選手の活躍により反対論が減り、内閣支持率が上昇するとの意見があった。その中で菅首相は25日、日本勢初の金メダルを獲得した柔道男子60キロ級の高藤直寿選手に電話し、「多くの子どもや若者が夢や希望をもらった」と祝福した。

しかし、これも一部で批判されている。「電話するならば全ての金メダル受賞者に平等にすべきだ」と別の与党幹部は指摘する。前述の砂川教授も「首相の人気取りの意図が明白だ」とみる。

その中で与党内の一部では菅首相のもとで衆院選を戦うことへの不安から、衆院選前に総裁選を実施すべきとの声が少数だが出始めている。ある中堅幹部は「党員票も含めた本格的な総裁選を9月にも実施し、その勢いで衆院選を戦えばよい」と指摘する。

野党側からも「不人気の菅首相のまま自民党が解散に踏み込むとは考えにくく、(総裁を)岸田文雄・前政調会長などに交代し、支持率を60%程度に回復させてくると覚悟している」(立憲民主党幹部)との声が出ている。

<甘利氏は早期総裁選けん制>

もっとも現時点で与党内では「選挙前に与党内がごたごたしているのを表に出すのは得策でない」(幹部)との意見が主流だ。

甘利明税調会長も25日のテレビ東京の番組で、9月末の任期満了に伴う党総裁選について「若干先に延ばして、衆院選後にという選択も十分考えられる」と述べ、早期総裁選論をけん制した。

竹本能文

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