情報BOX:五輪選手が亡命のベラルーシ、四半世紀続く強権体制
[東京 3日 ロイター] – 意思に反して帰国指示を受け、羽田空港へ連れて行かれたベラルーシの五輪代表、クリスツィナ・ツィマノウスカヤ選手(24)は、隣国のポーランドが2日に亡命申請を受け入れ、4日の直行便で滞在する東京からポーランドへ向かう予定だ。
ベラルーシはルカシェンコ大統領が1994年から同国を厳しく支配。昨年夏の選挙で勝利後、不正があったとする市民が大規模な抗議デモを行ったが、これを暴力で弾圧した。選手が政府からの支援に依存する国としては珍しく、ベラルーシではアスリートも抗議に参加、複数が投獄されたり、代表チームから外されている。
<政治体制>
共和制で元首は大統領。ルカシェンコ大統領が1994年に初当選し、6期25年以上にわたって現職にいる。2010年に4選を果たした後には、野党の抗議デモが発生。治安部隊が制圧して西側諸国から問題視された。
<西側からの制裁>
欧州連合(EU)は04年、初めてベラルーシに制裁を発動。11年には人権侵害や選挙不正を巡り制裁措置を強化した。その後、ルカシェンコ大統領が16年に政治犯を釈放したことで、多くの措置を解除した。
<20年夏の大統領選>
20年8月9日に投票が行われたベラルーシ大統領選挙は、現職のルカシェンコ氏が80%を得票して6選を決めた。反政権側は投票に不正があったとして、選挙結果の受け入れを拒否。首都ミンスクなどで前日に続き抗議活動が広がり、警官隊と衝突した。
長く政権の座にあるルカシェンコ氏に対し、市民からは経済政策や人権問題、新型コロナウイルスへの対応を巡って批判の声が上がっていた。その後も抗議活動は続き、多数拘束されている。
海外の選挙監視団は1995年以来、ベラルーシの選挙が自由で公正であるとは認めておらず、今回も選挙前にルカシェンコ氏の対抗馬が拘束されたり、大統領に反対の声を上げた人物への捜査が行われるなどした。
<民間航空機を強制着陸>
ベラルーシ当局は21年5月23日、アテネからリトアニアに向かっていた欧州格安航空会社(LCC)ライアンエアー機に対して、危険物が仕掛けられた可能性があるとしてミンスクの空港に緊急着陸するよう指示した。搭乗していたベラルーシの反体制派ジャーナリスト、ロマン・プロタセビッチ氏(26)が身柄を拘束された。EU、米国、英国、カナダ、はベラルーシへの制裁を発動した。
<ロシアと欧州の緩衝地帯>
旧ソ連のベラルーシは、ロシアの同盟国。ロシアから西ヨーロッパへつながる石油パイプラインが通るほか、欧州とロシアの間の主要な陸路となっている。ロシアにとっては北大西洋条約機構(NATO)との緩衝地帯でもある。